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「活版印刷への道…228km(中編)」 [デザインetcのはなし]

さて、活版印刷に熱を上げ始めた私。
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2012-08-05

7月28日(土)
午前4時からロンドンオリンピックの開会式の生中継が始まったこの日
早起きして開会式を観ながら支度していた私。

007とエリザベス女王陛下が出た時なんぞは、もう釘付けに。
http://estorypost.com/world/queen-and-007-skydive-into-olympic/

スカイダイビングで陛下が降りるなんて…誰が想像しましたか?
そして007のテーマ曲にテンションMAX!

「ただし、個人的に007はピアース・ブロスナン派です」

ま、これは人それぞれでしょうが…。

結局、最後まで見る事できないので…録画放送を予約して自宅を出発。
そして午前8時、名古屋駅発のアーバンンライナーに乗って向かった先は…

「大阪」

というのも…大阪市北区にある

「なにわ活版研究所」さん
http://kappan.did.co.jp/

こちらで
活版印刷のワークショップが開催されていたからです。

なにわ活版研究所(なに活)さんは
40年以上昔のドイツ製の活版印刷機
そして、手フートという手動式の活版印刷機が
現役で活躍している活版印刷のスタジオ。

活版(凸版)印刷だけではなく、
箔押し、バーコ、エンボス、
小口染めなどの加工も行なっているだけではなく
ワークショップの開催はもちろん
活版印刷機や加工機の時間貸しを行なうなど
学ぶ、つくる、集うためのスペースを
提供されているんです。

そんな「なに活」さんを知ったのは、twitterから。
なに活さんのところのwebページには
今までのワークショップなどの風景が紹介されていて
その楽しそうな雰囲気に

「私も行ってみたいなぁ」と、興味津々に。

そして、twitterをされている所長さんと
何度かやりとりをさせていただき…
この日、初めてお伺いすることとなりました。

梅田駅から徒歩20分ほど…
歩くのが苦にならない私は、
駅からの道のりを、日傘片手に、
時々キョロキョロしながら歩く、歩く、歩く…

そして到着したのが…

「大同印刷所」という看板が掲げられたビル。

『こんにちは…』と引き戸を開けると…そこには…

なに活WS_1.jpg
「夢にまで見た、手フートが勢揃い」

※手フート:手フート印刷機…つまり、小型の印刷機です。

私の血液がドッと沸き上がったのは言うまでもありません。
そんなこちらのスペースで、ワークショップする訳です。

なに活WS_3.jpg
こちらのスペースは壁面はミニショップとなっており
活版(凸版)印刷とUVオフセット印刷で作られた
ポストカードなどが並んでいたり…

なに活WS_4.jpg

なに活WS_2.jpg
活版印刷に使われる様々なアイテムが
センス良く、ディスプレイされていました。

「素敵」

突然憧れのスペースに、足を踏み入れてドキドキしながらも…
スタッフの方にごあいさつして…
早速、まずは凸凹孔平(でっこぼっこへー)体験コーナーで
印刷の四大方式を体験しました。

さて、凸凹孔平(でっこぼっこへー)とは…

凸版 凹版 孔版 平版

つまり…

「印刷の版の種類なんですね」

詳しくはこちらに掲載されておりますが…
http://kappan.did.co.jp/2012/07/ws.html

「懐かしいねぇ」

学生時代に、印刷理論などで習いましたね。

そんな印刷の四大方式を体験しながら
1枚のポストカードを完成させるという訳です。

なに活WS_7_1.jpg
凸版は、最初にたくさん並んでいた、あの手フートで刷ります。

そして…

なに活WS_6_3.jpg
凹版は銅板。

なに活WS_6_2.jpg
フォトエッチングした銅版を、ミニチュア・プレス機で印刷。

なに活WS_6_1.jpg
孔版(謄写版)はアメリカ製の古い謄写輪転機で。
版になる原紙は、鉄筆やヤスリ、タイプライターで製版をします。

孔版というとあまり聞き慣れないかもしれませんが…

「ガリ版とか、プリントゴッコとかだと馴染みがありませんか?」

細かい穴からインクが染み出ることにより紙に印刷がされる原理です。

「私は学生時代にシルクスクリーンをやりましたね」

そして、平版は、オフセット印刷で。

「オフセットって…中学の美術の教科書で
 その手順を読んだこともあって、
 一度やってみたかったんですよ」

化学的にに油の載る部分と水の載る部分に
分けた版を作ることにより
版画の版のように凸凹のない版で
印刷する方法なのです。

「これが実際やってみても本当に不思議で…」

平面なのにインクが乗る、乗らないの部分がきれいに分かれる訳です。

なに活WS_6_4.jpg

で、完成したのがコレ。
(赤い4本線のラインが、平版のオフセット印刷です)

「おぉっ」

こうして形になると…嬉しいよね。


続いては…活版印刷の多色刷りのひとつ「レインボー印刷」にチャレンジ。

なに活WS_7_2.jpg
ベースの色をなじませてから…
混色したい色を置いて、何度かローラーで馴染ませ
印刷すると…

なに活WS_7_3.jpg
「レインボー」

今回は暑中お見舞いを印刷しましたが…

「花火のグラデーションのイメージにピッタリですね」

とはいえ、すぐに色が濁ってしまうので
数枚印刷したら色を落としてまた最初から…
と、こんな具合に色を何度も替えるので、
このレインボー刷りは水性インキが使われていました。

私の前後にも印刷された方がいらっしゃいましたが…

「誰一人として、同じ色のグラデーションがない」

そう、1点もののグラデーションなんです。

「深いなぁ…」

なに活WS_7_4.jpg
刷り上がった花火の色に活版印刷独特の「凹み」も少しあって

「グラデーションがより立体的に…」

素敵な一枚になりました。

なに活WS_8_1.jpg
他にも…タイプライターを実際に使わせていただくことができました。

普段からパソコン業務な私ですが…

「タイプライターって、1文字、1文字に重みがあるのね」

キータッチが重いので…

「昔の人はタイピングが大変だっただろうな」

と、思いを馳せてみたり…

赤と黒のツートンのカーボン紙がセットされていたのですが
これは、タイプライター本体のレバーで

「赤」と「黒」の色を切り替えることができるんですね。

つまりレバーで切り替えることでそれぞれの色のところに
タイプライターの文字が押される訳です。

twitterにこれをアップしたら、
とあるフォロワーさんから
「修正する時には修正用のテープがあって
 それを打って、間違った文字を消したんですよね」
と教えていただきました。

そして…文字を1行分、打てるだけ打つと今度は改行ですが…

「紙をはさんだローラー部分を右手に押しながら移動させると
 『チンッ』という音とともに改行がされます」

いいよねぇ…

なに活WS_8_2.jpg
という訳でブログのURLを打ち込みしてみました。

そういえば…この音聞いて思い出したよ…



「ルロイ・アンダーソンのタイプライター」

まさに、あの「タイプライター」でした。

他にも活版印刷に関する資料がたくさん展示されていました。

なに活WS_9_1.jpg
様々な版や

なに活WS_9_2.jpg
紙型

なに活WS_9_3.jpg
本物の羊皮紙

そして…

なに活WS_9_4.jpg
懐かしの写植の文字盤も。

この文字盤を印画紙の上にのせ、文字を焼きつけるんです。

写植機.jpg
「こういう機械でね」

懐かしいですね。はい、この画像はこちらに載っていました。

写植_1.jpg

「写真植字の見本帳」

懐かしいと思われる方もいらっしゃるのでは?
これ、私が学生時代に実際に使っていたものです。

写植.jpg
「当時、新しく追加された書体等の説明が書いてあるページがあったりしてね」

写植_2.jpg
学生の頃、デザインの実技の授業で
これ見ながら写植の指定の仕方とか手書きしたよね。

実はこの手持ちの「写真植字の見本帳」は今でも現役。
というのも…年配のデザイナーさんから
ラフデータ作成の際の文字選びで、イメージとして
昔の写植の文字で指定することがたまにあるので
参考にしているんです。

「ゴナとかナールとかね」

そうだよねえ…現在、編集の主流になっている
Adobe系のグラフィックソフトの単位だと
文字の大きさは、ポイントの単位に慣れてしまったけど…
数値的に言うと級の方が頭では計算しやすいんだよね。

「年配のデザイナーさんだと、文字の指定は圧倒的に級数だし」

写植_3.jpg
なので…
私などは、こんなスケールなどを普段使ったりもしていますけどね。
たまに、データがなくて印刷物しかない場合などは
データ復元の際にこれ、大活躍なんです。
あと、まだ実務経験がない後輩達にも貸してあげたりしています。
このスケールを実際の印刷物にある文字にあててみると
文字の大きさがよく分かるんですよね。

そうそう…写植の級数、送り歯の指定とかね…

「私が新卒で勤め始めた頃はまだあったよね…写植」

私が新卒で勤め始めた頃は、まだ紙原稿とか結構あって…
(もう今では想像もつかないんだけども…
 当時の職場の4階の倉庫にどっさり積まれていたのよ)
官公庁や銀行もののフォーム系の印刷物の原稿では
印行(いんこう:いつ印刷したものか、何部印刷したのかが分かる印のこと)
などは、写植打ってもらって、紙の原稿で張り替えたり
もしくは、それをフィルムにして
部分的に差し替えたり(ストリップ修正呼んでいた)していたなぁ。

「懐かし過ぎる…」

昔は写植だけ取り扱う会社もあったのに…
いつしか無くなってしまったよね。

「色々思い出してしまったよ…」

さて、ワークショプはこれだけではありません。
今度はキラキラのワークショップにチャレンジしますよ。

ゆるく続いていきます…
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