「高畑勲展(岡山県立美術館)に行くために…片道330kmをひた走った話」 [展覧会のはなし]
2019年8月15日に片道330km。
移動時間が滞在時間のほぼ倍という、岐阜〜岡山という、無謀な日帰り旅行が決まった理由…
2019年7月2日(火)〜10月6日(日)に東京国立近代美術館で開催された高畑勲展
なにぶん会場が東京でしたので…私は、日曜美術館での特集を見て我慢していた訳ですが…これが我慢にならないところが私の性分。
「あれ?これ…来年、2020年の4〜5月に岡山に巡回するんなら…ゴールデンウィークに岡山旅行とセットにして、行ったらいいんじゃない?」と相方に相談。
すると…高畑勲監督ファンの相方のことです。
『それ、いいね!』と、二つ返事で岡山の旅が決まったのです。
しかし…まさか2月にコロナウイルスが日本でも流行し始め、緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出を自粛せねばならないご時世になるとは夢にも思わず。
さらに、コロナウイルスの影響は美術館にも大きな影響が出ました。
事実、名古屋市内で開催予定だった企画展の多くは中止に。そして岐阜県内で開催予定だった企画展は延期に延期を重ねて開催など、当初の予定とは全く違う予定での開催が続出。
それは、高畑勲展巡回予定先となった岡山県立美術館も同じで、高畑勲展の巡回先でもある岡山県立美術館も休館となり、結局、ゴールデンウィークの岡山の旅は幻に。
ところが…
緊急事態宣言も解除され、以前とまではいかないまでも少しずつ日常が戻りつつあった7月のある日のこと。相方がふと、岡山県立美術館のホームページを見て歓喜の声を上げているではありませんか。
「ゴールデンウィークに諦めた企画展が8月1日(土)~9月27日(日)に変更されている!」
そして切り出したのは、2月に東京で参戦するライブ中止を皮切りに、ことごとく行きたかったライブがコロナウイルスの感染拡大の影響で中止となり、どこにも行けず、自動的に蟄居となっていい加減、我慢の限界に来ていた相方の方でした。
『不要不急で県外に行くのは良くないことだとは思うけどさ…ここまで楽しみにしていたイベントが中止になって、もう自分は限界。せめてこれだけでもお盆休みに行かない?』
「ちょっとまって!岡山に行くって…どうするの?」
『車で高速をひた走る…』
「嘘でしょ?」
確かに、以前に神戸まで車で高速道路をひた走り、出掛けたことはありましたが…これは致し方なくだったのです。台風が到来し、公共交通機関が運休する可能性があったからです。
ただ、今回の場合、コロナウイルスの感染のリスクを減らすには、確かに自家用車での移動が賢明なのに変わりはない訳で…
『自分が運転する!』
と、断言する相方を目の前に、私も首を縦に振るしかありませんでした。
何より、自分自身もお盆休み明けは例年、繁忙期に突入して大変な日々しか待ち受けてないので、せめてお盆休みぐらい繁忙期を乗り越える糧があってもいいんじゃないかとも思ったのも事実。
『このご時世ですから…滞在時間は必要最小限にして現地の方々のご迷惑にならないように!』
そんな訳で片道330km。
移動時間が滞在時間のほぼ倍という、無謀な日帰り岡山旅行のはじまり、はじまり。
朝早くに岐阜を出発し…到着したのは…
岡山県立美術館「高畑勲展」
展覧会の会場には…
アルプスの少女ハイジ
パンダコパンダ
赤毛のアン
火垂るの墓
かぐや姫の物語
懐かしのアニメーションから近年の名作まで、絵コンテから詳細に描き込まれた作品のプロット等々、貴重な資料が所狭しと並んでおり、思わず凝視。
「これは…凄い…」
コロナウイルスが幸いとなったのが、今回の企画展が予約制の鑑賞だったこと。館内の鑑賞者の数は十分過ぎるほど、ソーシャルディスタンスを取ることができ、なおかつ、じっくりと展示物を鑑賞することができます。
「混雑する企画展だと、後続の鑑賞者が気になって集中できない時もあるのでね」
美術鑑賞あるある。そんな訳で…予約制は本当にありがたかったです。
アルプスの少女ハイジや、パンダコパンダは再放送などで知った世代なのですが、もう何度も見ている作品なので、絵コンテや資料を見ると…
「あ!あのシーンだ…なるほど…こんなところに注意して制作されたいたのか」
と、赤入れされた修正箇所などを見ては、高畑勲作品のファンとしては思わず笑みを浮かべてしまう…あぁ、至福の時ですね。
アルプスの少女ハイジはジオラマが展示されていて…
こちらは唯一、撮影可能でした。
さて、そんな会場で特に印象的だったのが、季節柄というのもありますが…「火垂るの墓」野坂昭如氏の原作よりアニメーションとなった名作。
作品のデティールをより細やかに表現するために、原作の文章のコピーに、取材をもとに書き込まれたのか…手書きの紙が貼り合わせてあるものが、ガラスケースに展示されていたのですが…
「原作の台詞を大切にしながら、見る側により伝わる表現方法に心を砕く高畑勲監督の熱量に圧倒される」
遺作となった「かぐや姫の物語」の絵コンテには、新たな表現に挑む、その線を目にして胸がいっぱいになりました。
念願叶って、見たかった企画展に足を運ぶことができ嬉しかったです。
やはり高畑勲作品のファンとしては、実物の絵コンテなど、貴重な資料の実物を鑑賞できるというのは贅沢の極み。
片道330km、車を走らせた甲斐はあったと思います。
最後はこのドア。
いいでしょう?
そして…オリジナルグッズを販売するフロアは…まさに…魔のエリアでした。
パンダコパンダのパパンダ。実は…足の裏に穴があいておりまして…
中にはおみくじが!
アニメーションを見たことのある方なら、おなじみの名セリフも忍ばせてあり、読むと思わず「ふふふっ」と笑ってしまいます。
ミミ子の家の裏にある立派な竹林を見て、パパンダが「特に…竹藪がいい…」と、言うシーンがあるのですが…これがまた、もし、パンダがお話できたら、こんな風に感慨深く語りかけるんだろうなぁ…と、私も大好きなシーン。我が家にはDVDがあるので、また見直したくなりました。
ふきんは、パンダコパンダの世界を凝縮したようなプリント。
パンダコパンダにちなんでお茶は笹茶。
一筆箋は、淡く優しい色遣いです。
コロナウイルスの影響で心が落ち込みがちだったこの頃。
本当に救われた展覧会でした。
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