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「JR名古屋タカシマヤ:上村 松園・松篁・淳之 三代展」 [展覧会のはなし]

前回に出かけた「エッシャー展」や「だまし絵展」のマグリットもそうですが…
基本的に私、中学生時代の美術の教科書に掲載されていた
近代美術の方から興味がわいたタイプでして…
(同じ理由で近代建築のレンゾ・ピアノを知ったタイプ)
短大の頃にも学校柄、西洋美術史とかやりましたけど…
ベタなルネサンス時代で…
「それ、高校生の世界史でやったところだし…」
と、あまり興味もわかず
さらに日本美術は…「仏像」
ええ、仏像の衣の「ひだ」の形状によって年代が違うことは
お勉強しましたけどね(苦笑)

まあ、こんな調子なので…

「日本画はあまり詳しくなくて…」

そんな私も着物に興味を持ち始めたこともあって
昔の図案などを意識して見るようになったことで…
「ここ、2、3年…日本画にも興味がわいてきました」
そうそう、きっかけは、2年前に伊藤若冲の企画展を観てから。
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2007-06-07-2
まあ、伊藤若冲さんの作品ってなんとなくデザインにも通じるところもあって
非常にきっかけとしては良かったのかなと。
それから日曜美術館などで放送される日本画家の特集を
意識して見るようになりましたね。
で、先日も「田渕俊夫展」を観た訳で…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2009-04-13
「私の中では日本画が熱い」
そんなある日のこと…
先日、何やらいろいろとお買い上げしたJR名古屋タカシマヤの「大京都展」(笑)
そこで、お買い物した人にはなんと次回の文化催の企画展の
招待券がいただけることに…

その招待券がね…すばらしいのですよ。

タカシマヤ美術部創設百年記念「上村 松園・松篁・淳之 三代展」
はい。あの美人画を描いたことで有名の上村松園。
「だいたい美術の教科書内で、日本の近代絵画のあたりでは必ず出てきますよね」
でも、上村松園(しょうえん)さんのことをあまり知らなかった私。
「つい最近まで上村松園さんは男性だと思っていました(爆)」
だって、あんなにすばらしい美人画をまさか同性の方が描いているなんて…
「想像もつかなくて」
とはいえ、松園さんの孫にあたる淳之さんは日曜美術館でそのお姿を拝見し
非常に印象に残りましたね。

「鳥類や動物をたくさん飼育している日本画家」

いや、それは淳之さんのお父様にあたる
松篁さんの影響もあってのことですが…
いやはや…3代続いて日本画家というのもすばらしいですよね。
そのお三方の作品が一堂に鑑賞できるとは…

「なんと贅沢」

という訳でとても期待して出かけてしまいました。
さて、松園さんの作品を観ての感想…
私はやはり2年ほど前から着物に興味を持ち始めたこともあり
「その繊細な着物などの着衣の描写」
表立って見える着物や帯については
その絵柄から何からすばらしい描写なのですが
さらに半衿から長襦袢まで…
「男性だったらここまで艶やかに、鮮やかな描写ができるのだろうか?」
と私の目は釘付けでしたね。
鹿の子のやわらかい絞りの具合から、たっぷりと糸を使った日本刺繍の質感
そしてつややかなべっ甲のかんざしまで…
さらには扇や鼓、和傘などの小道具からも、その秀逸な描写力からは
目が離せませんでした。

あと、感じたのは「動を感じる静」かなと。
チラシのメインビジュアルにもなっていたニューヨーク万国博覧会にも出品された
「鼓の音」
(チラシに掲載されていたものを撮影しました)
鼓の音.jpg
目を閉じると、その後鼓の音が聴こえてきそうなこの緊張感。
ええ、非常に良い緊張感。
他にもいろいろ…
むしの音jpg.jpg
虫の音に耳を傾ける女性の愛らしい仕草も…
(図録に掲載されていたものを撮影しました)
牡丹雪.jpg
牡丹雪に足もとを取られながらも行き先を急ぐ女性2人の姿など…
(図録に掲載されていたものを撮影しました)
その場の空気感だったり、音が聴こえてきそうなその作品の数々。
時を忘れそうでした。

とはいえ、女性ならではと思った作品がひとつ。
それは「焔」という作品。
松園さんが描いた作品は作品保護のため、下絵と
孫の上村淳之さんが複製した作品が展示されていました。
(図録に掲載されていたものを撮影しました)
焔jpg.jpg
題材となっているのは「源氏物語」の「葵上」の中で
葵上に嫉妬するあまりに生霊となった六条御息所。
嫉妬心にかられ、妖しい姿でありながら美しさも感じる
同性ながら女性の怖さを言わずとも感じずにはいられない
そんな作品です。

どうも、この作品を制作する前に松園さんは作品制作でスランプに陥ったそうで
その当時の深層心理が色濃く出ているのだそう。
「だからか…六条御息所の目から目をそらすことができない」

創作への情熱を昇華させたい松園さんの熱い想いが
この作品につまっている気もして…心揺さぶられました。
そして…「女性だから描ける、女性の恐ろしさ」
ここまで女性の恐ろしさを描けるのは…やはり女性ならではかなと。
非常に目に焼き付いた作品のひとつでありました。


続いては松篁さんの作品。
花鳥画を得意とする松篁さんの作品には、
お母様の松園さん譲りのきめ細やかな描写力に加えて
動植物を慈しむあたたかい心が加わりとても深みのある作品に感じました。
青柿.jpg
雨に見舞われる青い柿を描いた「青柿」
(図録に掲載されていたものを撮影しました)

その厚みのある青々とした葉と、鈍く光る青柿。
そしてそこに降り注ぐ雨と葉からこぼれ落ちる雫。

「あぁ、柿が活き活きと枝葉を伸ばしているなぁ」と
そして個人的に、父方の祖母の家のあった柿の木を思い起こさせて
先日、卒寿を迎えた笑顔の祖母を思い出しました。

樹陰.jpg
他にも樹の陰で羽根を休めるマミチャジナイを描いた
「樹陰」も、鳥が首をくいっとあげた愛らし姿と
若葉が生い茂る瑞々しさにふと、心が安らぎました。
(図録に掲載されていたものを撮影しました)


最後は淳之さん。
お父様の松篁さんが培われた「日本の花鳥画の世界」をさらに追求されたような
そのストイックであり、かつ自然の厳しさ、優しさを描こうとする魂が
感じられる作品の数々には感動しきりでした。
そして「鳥と共に生活されているからこそ、ここまで描けるのかな」と。
自然とそう思える作品の数々でした。
ちなみに淳之さん、現在は263種類1600羽に
及ぶ鳥を飼育していらっしゃるのだとか。

私が一番惹かれたのは、「雪中遊禽」 (せっちゅうゆうきん)
(図録に掲載されていたものを撮影しました)
雪中遊禽.jpg
紅ヒワが雪が積もる、満開になりつつある梅の木に
時に羽根を休めたり、見下ろしたり、仲間を見つめたりと…
それぞれの鳥達の姿を見るとなんとも想像力がふくらみます。
「ここにとまっている鳥はこんな性格かも…」と
思わず観ていた私も微笑んでしまいそうになりました。

他にも淳之さんの我が子が家を出て巣立つ姿に、
初めて冬を迎える子狐の姿を重ねて描いた「初めての冬」
(図録に掲載されていたものを撮影しました)
初めての冬.jpg
花鳥画のイメージが強かった淳之さんの作品の中では
とても新鮮でかつ、メッセージ性を感じずにはいられませんでした。

今回の作品展示はとてもすばらしかったです。
大変満足です。
あと、余談ですが…
図録は普段よくある図録よりはサイズが小さいですが
その分、お値段がとてもリーズナブルで
おかげで即、お買い上げ(苦笑)
家で何度も観てます。それぞれの作品の解説文がついているので…
「もう1回観たいなぁ」と思いました。

そうそう。あとは、毎度おなじみポストカードなどの小物をお買い上げ。
花鳥画が私の心に残ったので、
今回はクリアファイルは松篁さんの「春園鳥語」にしました。
春園鳥語.jpg
残念ながら他のタカシマヤの店舗での展示は
今年の3月から随時行われていたようで
今回の名古屋の展示が回顧展としては最後のようです。
JR名古屋タカシマヤでは6月1日(月)まで開催中です。

とはいえ、奈良市にある「松伯美術館」
http://www.kintetsu.jp/shohaku/
今回の作品展示を観て一度出かけてみたくなりました。
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コメント 4

Miltmozmmer

私も昨日観に行きました♪
ご年配の方々でごったがえしていたので、
さら〜っと観て出て来てしまいましたが。。。
日本画のことはあまり詳しくないので、
上村松園さんというお名前と画がはじめて一致しました。
(代表作は美術関連の本とかで見たことはあったけれど…)
松園さんの繊細な表現には目を奪われましたが、
描くモチーフは息子さんやお孫さんの方が好みな私。。。
グッズ売り場で、山羊の描かれたカードやファイルとにらめっこしてました。(笑)
大京都展で頂いたチケットがまだあるので、もう一度行こうと思っています☆
by Miltmozmmer (2009-05-24 18:39) 

ユキヲ

>Miltmozmmerちゃんへ
こちらにもコメントありがとうです。
実は私、初日の夜に出かけたの(笑)
そしたらさすがに…コミコミせずにゆっくり見る事できました。
そうね…私もどちらかというと、松篁さんと淳之さんの方が
好きですね。特に淳之さんの作品の見せ方「空白を活かした見せ方」
というところはなんだかデザインにも通じる部分もあって…ね。
ポストカードなどのグッズ…
そうそう、山羊も愛らしくてよかったですね。
私も花鳥画の方が基本好きなので…まあ、迷いましたよ。
あれだけの種類のポストカードをあそこに置くのは反則(笑)
最初、あれこれ手にしてさすがにまずいよなぁと思って…
一筆箋もほら、いろいろな所に出かけては買うから
家に何種類もあるし(爆)
「ポストカード2枚とファイルだけ」と意志を強く持ち(笑)
結局上のものに落ち着きました。

私もあれこれお買い物してまだチケットがあるので、
平日もう1回行こうかなと思ってます。
お買い物してこんな素敵な文化催しのチケットいただけるなんて
本当、ありがたいですわ( ´艸`)


by ユキヲ (2009-05-24 18:50) 

菜の花

昨日観てきました。
上村松園は、母が好きで・・・だったか、
高3で一人で実物(作品『草子洗小町』を「東京芸大卒業制作展(?)」への特別出展だか)を観たときは、その作品の美しさにショックを受け、
時を忘れて、本当に見とれたものです。
「動を感じる静」・・・まさにそうですよね。
「清らかで美しい」絵、そして「いい」展覧会でした。



by 菜の花 (2009-05-26 19:41) 

ユキヲ

>菜の花さんへ
コメントありがとうございます。
そうですか…草子洗小町、以前にご覧になってましたか。
日本画は顔料の加減もあるのでしょうか
油絵と違い、透明感を残しつつ
キラキラと光るところがまた魅力的ですね。
美人画は艶やかに、動植物はいきいきと…
本当に命あるものの鮮やかな姿がそこにありました。
上村三代展…本当、いい展覧会でした。


by ユキヲ (2009-05-27 18:59) 

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