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「ナンシー関の大ハンコ展」 [展覧会のはなし]

9月23日(火・祝)
午前中からお昼にかけて家のことを片付けて
午後から出かけたのは、名古屋パルコ。
目指すは…

「ナンシー関の大ハンコ展」
大ハンコ展.jpg
残念ながら2002年にお亡くなりになっております。
今回は七回忌を機に開催される展覧会。
そのせいか何だか自画像でもあるこのハンコが、
遺影にも見えますね。

今回の目玉はなんといっても彼女の仕事場に残してあった
5000個強のハンコの展示をはじめ、雑誌のコラムなどの
今までの仕事の軌跡をたどるパネル展示。

実は私。
12年前。見ているのですよ。ナンシー関さんの展覧会を。
「顔面百貨店」
顔面百貨店.jpg
当時、短大2年生に進級して間もなくの頃。

たまたま同じクラスの子で会ったら会話するぐらいの
本当に顔見知り程度の関係だったのですが
「割引券があるからよかったら」と言われて
もらったのがこのナンシー関の「顔面百貨店」でした。

「ふぅ〜ん。消しゴムハンコねぇ」
割引券と一緒にもらったチラシの裏面をみると
有名人を彫り上げた消しゴムハンコが点在しており
「ほぉ…面白そう」と思って、出かけた訳です。

思わず「にやり」とする観察眼光る似顔絵とそこに添えられたひと言。
この当時で600個展示されていましたけど…
本当、小さいながらも見応えがありました。
それにたまたまなんですが…ハンコを押す際に使われていたインクが
マゼンダやイエローなどなど…生のインクに近い色。
そう、それは当時、短大で勉強していた
シルクスクリーンでよく使うインクの色に似ておりました。

ある意味、ナンシーさんの作品って、デザインに近いなと感じた私。
余分なものをそぎ落として、見せたいものを見せるところが。
その上、表現技法は「消しゴムハンコ」といういたってシンプルな表現技法。

「ああ…色数が少なくても、こうやって見せたいものを工夫したら
 たとえ単色でも際立つし、面白いな」

と、当時、シルクスクリーンの授業は表現技法としては
とても原始的に思えて、あまり楽しさを見いだせず
少しくすぶっていたのですが…
「まあこういう学校でないと出来ない実技だし…良い経験にもなるかな」と
ある意味、ポジティブ思考になって取り組むようになりましたね。

なので、ナンシー関さんにはわずかながら感謝しています(笑)

さて、本題の今回の展覧会について。
いやはや、5000個強のハンコの展示は圧巻でした。
ナンシーさんの死後、知人達数名が週末の休みなどを利用して
整理し、ジャンルごとに分類したというハンコ。
「ほぉぉぉ」の声ばかりあげてました。

ただ、残念なのは…スペースの関係もあるのでしょうが
例えば、「アイドル」などと分類された数多くのハンコのうち
実際に捺印されて、パネルになっているのはそのうち20点ほど。

「まあ、モノ作りに携わっている人などは
 確かに制作されたハンコの実物を見たいだろうけど…
 やっぱりそれは捺印されたものもあってのことでしょう」

少し、不満になりつつも
生前、雑誌にて連載していたテレビのコラム記事など
パネル展示を観るというより「熟読」(笑)

中でも地方番組における大東めぐみのスタンスを書いたものは
私も当時、見ていた番組だったので
(名古屋の方ならご存知?「ビビデバビデブ」小林克也さんも出演されていた)
笑いをこらえながら読みましたし…
あと、日韓開催のW杯が開催されていた日本全体の風潮を
『応援せざるをえない、巻き込まれる感覚』的な表現をされていて
「あぁ、分かるなぁ」と思わずうなってしまいました。
私、基本的にスポーツ観戦はしないタイプなのですが
当時、普段ならサッカー中継なんて見ない人までもがこぞって
「昨日の試合見た?」と毎日やたらとW杯を話題あげては
盛り上がっている光景を見て、
私自身、げんなりしていたことを想い出しましたよ(苦笑)

そして出口付近にはナンシー関ゆかりの人達からの追悼メッセージが
映像で流れていました。

パネルでコメントの一部が展示されており
その中で語られていたことに少しかぶるのですが…

「この人がまだ生きてたら今ほどテレビはつまらなくならなかっただろうに」

と、展示されていたコラム記事等を見て
私も痛切に感じましたね。

私事ですが…
先日も週末にたまたまチャンネルを変えてモニターに映った
バラエティー番組を観たのですが…
やたら出て来るテロップと効果音。
そして1人の芸人をいじり倒して大爆笑する芸人達。

私はそれを見て「どこが面白いんだ」と思った。

そういえば、以前に放送されたNHKの「知るを楽しむ」の
「久世光彦」さんの回で大石静さんがお話されていました。
『テレビが1人に1台となり、非常にパーソナルなものになっている。
 テレビがリモコンでチャンネルをピッピッピッと変えられるものに
 なったことを境に、指でいたぶられるものになった。
 昔は立って、あるいは這ってテレビのある所まで行きチャンネルを
 回すのは意外に面倒なので、多少つまらなくても、しばらく見ていた。
 それが寝転がったまま、ピッとチャンネルを変えられるとなれば、
 誰もじっくり見ようとはしなくなりますからね』

確かに…そういう「時代の流れ」もあるのだろうけど…
となるとテロップと効果音で視聴者を
惹き付け続けなくてはならないのは仕方のないことなのだろうか?

昔と比べてバラエティーもちょっと過激なことをすると
すぐに視聴者から苦情が出るらしく…結果、表現が限られてきた。
で、安心して見ることのできるクイズ番組の乱立。

ドラマに至っては…
オリジナルの脚本を書けるような力量を持つ脚本家も少なくなったのか
気がつけば「原作はコミック」「原作は携帯小説」ということが多い。
おまけに1回視聴率がとれれば、間を取って、続編を導入。

私も10年前と比べ、仕事や家事に追われて、
物理的に時間がなくなったものの…
それにしても本当にバラエティなどを視聴しなくなった。
気がつけば、チャンネルを合わせるのはニュース。
そしてドキュメンタリー番組、NHK制作のドラマをメインにチェックする。

「民放のドラマで毎回観るのは1クールにつき良くて1〜2本、
 時には観ないこともある」

ナンシーさんが生きていたら…
ワンフレーズばかりを繰り返す、芸人のことを何というだろう。
クイズ番組だらけのテレビ欄を何というだろう。
原作ありきのドラマに何というだろう。
ぜひ伺いたいと思った。

「本当、惜しい人が亡くなったなぁ」

そう。ナンシーさんのハンコには
テレビの黄金期の場面、場面が切り取られている。
どれを見てもとても面白かった。というか素直に懐かしかった。

「このハンコの面白さを
 そのうち、分からない人の方が増えないだろうか」

そうなったら、テレビはもっとつまらなくなるんじゃなかろうか?

「こうやって定期的にやって欲しいですね。ナンシーさんの展覧会」

とはいえ、それまで自分が待てそうにないし(苦笑)
できれば手元に置いていきたいと思ったので…
10月から気になる演劇鑑賞や企画展などへのお出掛けなどを
ひかえているにもかかわらず…
買ってしまいましたよ。これを。
全ハンコ5147.jpg
「ナンシー関 全ハンコ5147」

まさに美術館で開催される企画展の図録並みに高いです(爆)
でも大満足。
家に帰ってからというもの…暇を見つけては
めくって「ふふふ」と笑っております。
そして見れば見るほど驚きの連続。

その観察眼と丁寧な「消しゴム版画家」としての仕事ぶりに

「尊敬」

いや、いい仕事を見せてもらいました。
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tanuki

あ~、行きたいですな~!!この展覧会は・・・
他の地域には巡回しないのでしょうか?
ナンシーさんは、ハンコの表現力もさることながら、コラムの内容もまさに「あ~!そうそう!それが言いたかったのよ~!よくぞ言ってくれた!!」と言いたくなるほど、世間の声を代弁してくれていたと思います。
辛辣な批評だけどいつも的を得ている・・・そのシャープな視点を、いつも楽しみにしていました。
これからもナンシーさんのような人が出てきてくれないかな~・・・と痛切に思う今日この頃です。

私もドラマとかバラエティは全くと言っていいほど見てません。
明らかに10年ほど前と比べて質が落ちているのがわかります。
だんだんとTV番組から「知性」という成分が抜け落ちていってるような気がします。

by tanuki (2008-09-29 12:21) 

ユキヲ

>tanukiさんへ
nice&コメントありがとうございます。
渋谷パルコで開催されたこの企画展が好評だったそうで
今のところ、私が出かけた名古屋(本日終了)と
仙台と札幌への巡回は決定したようですが…どうも関西の方の
巡回の情報が出てこないようです(汗)

ナンシーさんの言葉には、テレビや芸能人が好きだからこその
厳しい言葉って雰囲気がします。
そう、決して相手を侮辱はしないし、かといってこびる訳でもない。
そのスルドイ部分を突くのが絶妙なんですよね。
ところが今はどうでしょう?
ちょっと問題を起こした芸能人は徹底的に叩いたり
そうかと思うと成功をおさめた人には頭をさげてヘラヘラ…
「これじゃあ番組の制作が危うくなる訳だ」としみじみ思います。

最近では少しずつドキュメンタリーへの流れができているようで
なんとなく嬉しい今日このごろ。
とはいえ、どうしても回数を重ねると
なんとなく対象物がはっきりしないまま映像となっていたり
粗い部分も出て来るところを垣間見ると少し寂しくなります。


by ユキヲ (2008-09-30 00:41) 

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