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「金沢旅日記〜金沢21世紀美術館へ行く:前編〜」 [旅のはなし]

さて、ガラスのハンコを手作りし、
無事に完成させたユキヲ
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2008-08-29-2

石川県観光物産館を後にし、
金沢城公園の石川門の前を通り、
金沢城石川門.jpg
お堀通りの坂を歩いていきます。
お堀通り.jpg
途中、兼六園の入口を通りました。
兼六園入口.jpg
やはり、外国人の方には人気のスポットなんでしょうか…
入口には外国人と思われる方の2人組がいらっしゃいました。

13時…
そして、見えてきたのは…
今回の旅行の大本命「金沢21世紀美術館」です。
21世紀美術館1.jpg
中に入ってみると、まだ夏休みということもあって
平日にもかかわらず家族連れ(それも小さいお子様連れ)で
にぎわっていました。
「通常の土曜日の午前中ぐらいの混雑かな」

とはいえ、ガイドブックや以前に購入したカーサ・ブルータスで
読んだ限りでは…ここの美術館は展示室の数も多いですから
通常の美術館と比べれば「人が多くて見づらい」ということは
ないと予想しましたけどね。

と思いながら、入館。
展示室以外の部分も見所がいっぱいです。
21世紀美術館6.jpg

21世紀美術館5.jpg

こちらの美術館もぐるりんパスと提携していて
入場料が割引になるんです。
(私の場合は有料の企画展を2つ鑑賞できるチケットの
 1,600円から100円引き)

で、チケットを購入して向かった先は…もちろん。

「ロン・ミュエック展」

最初に見たのは「マスク2」
188センチもある顔だけが
白い展示台に横たわり
今にも高いびきが聴こえてきそうなぐらいの
その、リアルな表情にまず驚きました。

目の周りのしわから、無精髭の生え具合。
まつげや眉毛のはえ具合。
そして横たわったが故の床に接している顔のゆがみ具合。
全てにおいて「おぉ」のひと言。

ちなみにこの顔は作者のロン自身がモデルなんだとか。
そう言われてみれば…彼、面長ですものね。

さて、じっくり見ている私の横で
学生ぐらいの年齢と思われるカップルが
「うわぁ〜。気持ち悪い〜」ときゃっきゃ言いながら見てたのですが
作品の近くに立っていたスタッフさんがそんなカップルを見て
「でしょ?」と言わんばかりの満足顔なところがなかなか良かったです(笑)

続いて見たのは「舟の中の男」
木製の舟の中に渡してある板に座っていたのは
腕を組み、小首をかしげながら遠くを見ている男性。
その首のかしげ具合。そこから来る背中の微妙な凹凸。
そして足の裏のしわなど、どこを見てもそこに男性がいるようにしか
見えません。
ただ、普通と違うのは…その男性の身長が80センチにも満たないこと(驚)

「こんなに小さい身体なのに…それを取っ払ってしまったら
 普通の光景なのに…なんだか自分の平衡感覚が崩れていきそう」

小さい男として表現したのは…
木製の舟での船出の不安で危うい感覚を表現したかったから?

「うーむ。深いですね」

その後も「マスク3」の、毛細血管までリアルに表現されたガラス製の
眼球に思わず吸い込まれそうな感覚に襲われたり…
「野性的な男」にはその、ありのままの裸体と伸びきった髪とひげに
本能のおもむくままに存在するような雰囲気にも取れ、少し怖さを感じたり
そしてロンの奥さんがモデルにもなったという
「イン・ベッド」は、その憂う女性の大きさに
とてつもない不安に襲われたりと
自分の感覚がビシビシと刺激されるのを肌身に感じました。

中でも印象に残った作品が2つあるのですが…
その1つは、今回の展覧会の図録の表紙にも
掲載されている最新作「ガール」
生まれたてでまだへその緒も付いている女の赤ちゃんが
立体になっているのですが…それがまた5メートル程ある
ビッグサイズなんです。
顔を歪めたその赤ん坊はまさに産まれたばかりのようで
身体のところどころに血液が付着し、目を細めながら
大きく身体を伸ばしていました。

その作品を前にしていろいろ考えていました。
「命の重み」とか「生まれたての子供が背負う、将来」とか
「生きるということ」とか、ここには書ききれないたくさんのこと。

「たぶん、去年の私だったら直視できなかったかも」

去年までの私だったら、今みたいに素直に作品のことを
感じ取れなかったと思う…たぶん、素通りしていたんじゃないかと。
理由はいろいろあるけど、自分のこと、周囲の人のことについて
いろいろな雑念も多かったから…こういうストレートに迫って来る作品は
きっと観る事ができなかったと思うし、
その作品のオーラを受け止められなかったと思う。

だけど、今年の自分はなんとなく
今年の前半にたくさんの人に出会って、癒され、
言葉には出してもらえなくても励まされ、
(と、あくまで私が勝手に解釈している)
そんなことが上手く自分の中で整理されたのか…
昨年よりも雑念に囚われる感じは随分と減ってきたし…
程よく力も抜けて、自然体になった気もする。

「会うべくして会ったのかなぁ」

それぐらい、この作品は今の私にはとても重要に思えたし

「会えて良かった」

と素直に思えたのでした。


1、2歩歩いて止まって、じっくり見て、
そしてまた1、2歩歩いて止まって…
しばらく見てましたね。

あともう一つの作品は
「寄り添う恋人たち」
原題は「Spooning Couple」(いちゃつく恋人)なんですが…

「私が観る限り、全然いちゃついた感じがしないのですが…」

目がなんとなくうつろで、疲れ切った様子で
添い寝をしているのは…身体に「しわ」や「ぜい肉」などもある2人。
決して若くはないその2人は
身体の下半身は確かに寄り添っているようにも見えますが
上半身には少し距離があり…その距離がまた想像をかきたてる
するとユキヲ…

「なぜかユニコーンの「すばらしい日々」という歌を思い出す」

なぜかというと…

歌詞の中に
「僕らは離ればなれ たまに会っても話題がない」とか
「いつの間にか僕らも 若いつもりが年を取った」とか
「なつかしい歌も笑い顔もすべてを捨てて僕は生きてる」
というフレーズが出てくるから。

なんていうんだろう…
やるせないというか互いのココロに距離感のあるというか…そういう感覚。
寄り添っているのにこのカップルにはそういうオーラが感じられるのです。

おまけにこのカップル。65センチほど。本当に小さいんですよ。
そのサイズの小ささ故に上から彼らを眺めるような形になるのですが…

「何だかますます彼らの行く末を案じてしまうよ」

心に迫る作品でした。

そして、鑑賞終了。
「あぁ…やっぱり金沢まで来て良かった」と思いましたね。素直に。
そして、また何年後かにロン・ミュエックの作品を見てみたいですね。

その後、別のフロアで開催されていた「サイトウマコト展」(有料)も
観てきました。

私はこの方の名前が学生時代によく図書館で読んでいた
「ADC年鑑(※)」でよくお見かけしていましたし、
受賞作品も見たことあります。
その頃と比べると随分とすっ飛んでしまったなぁと思いながらも
全部作品を見てきました。
まあ、あいかわらずデジタルな仕上げは変わらないですけど。
その分、単調に見えて少しもの足りなかったです。
(あ、これは、あくまで私の視点と感想です)
最後の円形の展示室に展示された作品は今までにはあまりない展示で
展示室の構造を上手く活かしている作品の見せ方かなとは思いました。

たぶん…私の場合
「グラフィックデザイナーとしてのサイトウマコト」を知っているせいか
「アーティストとしてのサイトウマコト」を素直に
受け入れられなかったのかも(-公-;)

ま、美術というものは感じるものも人それぞれですから(苦笑)

※ADC年鑑
「東京アートデレクターズクラブ」が出版しているその年に優れた
 ポスター、テレビコマーシャル、新聞・雑誌広告、など
 幅広い媒体の優秀作品を収録した分厚い作品集。
 平面のポスターだけでなく、CMなどの作品も掲載されているため
 現在ピタゴラスイッチの監修をしている佐藤雅彦さんの名前を
 CMプランナーとして私が学生当時から知っていたのも、
 このADC年鑑などに佐藤雅彦さんが手がけた「モルツ」のCMなどが
 掲載されていたため。

おっと、熱く語っているうちに長くなってしまいました。
常設展示などのお話は…後半に続きます。

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tanuki

金沢旅行、おつかれさまでした(^^)
ロン・ミュエック展、私はTVの「新日曜美術館」のアートシーンの中で作品群を見たのですが、それだけでもかなりの迫力が伝わってきたので、まして実際に近くで作品をご覧になったユキヲさんは、よりいっそう強いインパクトを受けられたことと思います。
普通のヒトと等身大の大きさの作品はないんでしたっけ?
それだけに、よけいに、人間の生き方って何だろう、と深く考えさせられる作品に仕上がっているのかもしれませんね。

サイトウマコトさん、検索して作品を色々拝見しましたが、刺激的なデザインが興味深いですね。覚えておきます(^^)

by tanuki (2008-09-01 11:42) 

ユキヲ

>tanukiさんへ
新日曜美術館のアートシーンでの映像を見てまさに
「行ってみたい!」と思った私です。
作品からあれほど強烈な刺激を受けたのは
本当に久しぶりのような気がします。
それ故に自然と考えることも深くなったり、
とても真摯にオーラを受け止めていましたね。

そうなんです。普通のサイズの作品はないんですよ。
それは作者が「女性の偉大さを感じて欲しいから」とか
いろいろと意味も含めてだとは思うのですが…
たぶん普通だったら「すごいね」で終わると思うんです。
そしてこれほど心に残らないでしょうし…
そういう意味では作者のエネルギーは計り知れないなと。
点数は他の個展よりは少ないかもしれませんが
その1つ、1つの作品から受ける、印象、感覚、思考などは
他の作品よりも大きく、重く、深いなとあらためて思いました。

サイトウマコトさん…
私も原色は好きなのですが、昔のサイトウさんの色使いは
原色ながらもとても攻撃的で怖い感じがするんですよね。
(いやまあ、それが効果的なこともありますけど)
そういう潜在意識もあってか苦手になってしまたかも(苦笑)
でも、上手く空間を利用して自分の作品をより良くみせるのは、
さすがだなぁと重いました
by ユキヲ (2008-09-01 23:23) 

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