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「向田邦子ドラマが見たくなる」 [テレビのはなし]

先日、岐阜駅構内にあるCDショップで奥田民生のアルバムを購入。
仕事や台風のような母のことで滅入っていたけど…
「明日はどうだ」なんて朝の通勤時に聴くとモチベーションが上がる。
単純なようだけど、音楽の作用というのは時にとても効果が出る。

さて、本題。
CD買ったその足で久しぶりに書店へ…
最近、日曜の午前11時から放送している「食彩浪漫」にはまっていて
http://www.nhk.or.jp/shokusai/
録画して見ているのだが、この番組、料理のレシピが出てくるだけあって
テキスト本が出ている。

「2月あと3週あるから立ち読みするとタネ明かしみたいになるからなぁ…」

と思いながらも結局、NHKのテキスト本の棚の前で立ち読み(笑)

すると私の視界に飛び込んできたのが「知るを楽しむ」の背表紙…

「田辺聖子さんの回は買ったなぁ…」と思いながらふと見たら
素通りできない人の名前を見つけた。それは…

「久世光彦」

「1月に放送してたの知ってたら…全部見たのに…」
と、がっかりするも、後の祭り。
無理もない。1月と言えば、仕事も忙しかったし…
着付の教室もあったし、実家でのいざこざで、ばたばたしていて…
「そういえば、テレビ欄もゆっくり見る事できなくて…
 帯ドラマとか録画予約するのでいっぱいいっぱいだったものね」

思わず手に取る。
そしてカラーページの所をめくった自分は
瞬時に、10年以上の前…テレビの前に釘付けになっていた自分を思いだす。

「む、向田邦子の、女正月!」

私の大好きな樹木希林さんから大石静さんまでが
久世さんのことについて語っている。

「これは買わなくては!」といそいで買い求めて帰宅後、熟読。

中学生の終わり頃からだろうか…
毎年、正月気分が抜けた頃や終戦記念で放送するドラマが大好きで
時間が許す限り、私が必ず観ていたドラマ…

「向田邦子ドラマ」

母から、この話を書いた人は飛行機事故で亡くなったことは
毎年、ドラマを放送する度に聞かされたような気がする。

ドラマの時代背景はだいたい昭和初期。
着物と洋装が交差する町中。
木造平屋建ての家が立ち並ぶ下町。
そして戦争の暗い影がじわり、じわりとしのびよる時代。

今の自分が住む世界とは、全く違う世界なのに…なぜか引き込まれた。

確かに当時は同級生と話を合わせるために、
いわゆる「トレンディードラマ(死語)」も観ていたけど…
向田邦子のドラマは何かが違ったし、何かひかれるものがあった。

なんていうかなぁ…人間味があるというか…
心の移り変わりにとてもリアリティがあるというか…
当時の子供目線の私から言うと…
「見てはいけない大人の世界」のような雰囲気。

男を追って出て行った母と、母親代わりに妹達を世話した長女との確執…とか。
不倫の恋に走る妹をたしなめる姉…とか。
ダメな男と別れられない娘…とか…そう。

「きれいごとだけじゃない、人間味のある、どろどろした所」

向田邦子のドラマにはそれがあるんだな。大小はあれど。
10代の頃の自分は「人と人とのみっともない対立」とか間近で見ていたから…
何かしら同じ「匂い」みたいなものを感じ取ったのかも。
だから余計に共感してたような気もする。

だけど、それが久世さんの手にかかると、なぜか魅力的に思えてくる。
むしろ、ずるいところとかが時にすがすがしく見えたり
時に深い悲しみを見せたり、可笑しく見えたりするのだから不思議。

たぶん、それが「久世光彦」さんの力量なんだと思う。

元旦に、皆が着物姿で神棚の前にずらりと並んで
柏手を打って新年の祈りをするところ。
父親からお屠蘇をもらい、みんなで順番に飲むところ。
そうかと思うと、
ちゃぶ台を囲んで食事をする家族。
両手鍋の中にはお味噌汁があって…
おひつのふたを開けて、お母さんが家族の茶碗にごはんをよそう…

ああいう日常の何気ない一瞬を丁寧にカメラで追っていたからこそ
あの人間味のある姿が、それぞれの俳優さん達から
浮かび上がってくるのだろうなあ。

「何だか、どんどん記憶がよみがえってくる」

母親役の加藤治子さんが大好きだった。
あのひょうひょうとした姿も、お母さんの役なのに
ドラマによって表情やトーンが面白いほど変化するところ…
アニメ好きの私が宮崎駿監督の映画「魔女の宅急便」を見た時に
あのおばあさまの声を聞いた瞬間「向田邦子ドラマのお母さん!」と
思ってしまったほど。私の場合、加藤治子さん=お母さん(笑)

あと、長女役が多かった田中裕子さん。
静かな佇まいながら、妹達を時に叱ったり、
時に楽天的な考えの母親と対立したりする姿が印象深い。

結局、久世さんが亡くなり、最後まで演出ができなかった
以前にフジテレビで放送されたスペシャルドラマ
「東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン」
田中裕子さんがオカン役、
そしてオカンの母役が加藤治子さんと知った私。
久世さんは企画までは担当していたらしいが…そのあまりにも久世さんらしい配役に
「本当、向田邦子のドラマみたい」と、しみじみ思いながらドラマを見た。

久世さんの工夫ある配役…

リアルタイムでは見ていないが「寺内貫太郎一家」のあの面々。
小林亜星に西城秀樹…今考えると、とんでもないキャスティング。

ちなみに私の中で忘れられない配役がある。
それは「華燭」というドラマ。
ここに「相楽晴子」さんが出演されていたのだが
ご存知の通り、私たちの年代だと、この方のイメージといえば
まさに「スケバン刑事2」の「ビー玉のお京」
ところが相楽さん演じる役は小さい頃の熱病によって知的障がいの残る妹の役。
蓄音機から流れる曲に合わせて、楽しそうに指揮者のまねをする
障がいを持ったが故に、純真無垢な心のまま成長した妹の姿を
丁寧に演じるその姿に驚いたと同時にこの時もまた、
ドラマの世界にぐいぐいと引き込まれた。
あの黒柳徹子さんのナレーションと共に…

だけど、2001年、宮沢りえさんが出演してとても印象に残っている
「風立ちぬ」を最後に大好きな向田邦子のドラマは終わってしまった。
毎年、密かな楽しみだったドラマがなくなったことは本当に寂しかった。

それから3年後に放送された「向田邦子の恋文」は
「ああ、向田邦子と久世光彦の名コンビで紡ぐあのドラマが帰ってきた」
と、本当にうれしかった。

でも、久世さんがお亡くなりになったことで向田邦子ドラマも永遠に…

スピートとか、スタイリッシュとか、刺激とかを求められる現代では
向田邦子ドラマを支持する人は少ないのかもしれないけど…
やはり、私はあのドラマが一番好きだ。

「知るを楽しむ」を読み終えて何だかとても懐かしくなって
「ああ、もう一度観たいな。向田邦子ドラマ」
いてもたってもいられなくなって…思わず探してみたら。
すでにあったのですね。DVDが…

「華燭」も気になるところですが…
やっぱり最後のドラマが気になるので…ひとまずこれを注文してみました。

向田邦子×久世光彦スペシャルドラマ傑作選(平成9年~平成13年)BOX

向田邦子×久世光彦スペシャルドラマ傑作選(平成9年~平成13年)BOX

  • 出版社/メーカー: レントラックジャパン
  • 発売日: 2005/12/22
  • メディア: DVD

めったにDVDなんて買わない私の大きな買い物…
だけど、向田邦子ドラマの魅力はプライスレス。


nice!(1)  コメント(6) 
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コメント 6

tanuki

私も向田さんのドラマ、すごく印象に残ってます。
実家にも、「思い出トランプ」や「男どき女どき」などの本があり、何度か読み直してました。
なんていうか、人間の生々しさを描写する力がすごいな~、という印象です。事故は本当に惜しかったですね。。。
今のドラマはガキ&若造向けの、単に騒がしい、薄っぺらなものばかりで、どうも見る気になれないものばかりなのですが、向田さんのような、いろいろ考えさせられる「大人のための」ドラマがもっと増えてくれたらいいな~、と切に思います。
このDVDはかなり魅力ですね~♪
by tanuki (2008-02-15 21:42) 

ユキヲ

>tanukiさんへ
nice&コメントありがとうございます。
向田邦子さん…
私も社会人になってから一時期、文庫本を買って
何度も読み返したりしてました。
やはり、王道ですけど「阿修羅のごとく」は面白いです。
私は妹がいるので、姉妹とのやりとりがとてもリアルで…
余計に共感してしまうんですよね。
本当、向田邦子さんの人間の描き方はすばらしいですよね。
あの事故がなければ、もっとたくさんのドラマを見る事が
出来たかと思うと、本当に惜しいです。
DVD…
本日、届きました!
もうパッケージだけ見て「にんまり」しています(笑)
また時間をみてゆっくり向田邦子の世界に浸ろうと思ってます。

テレビの向こうには確かに老若男女がいる訳ですから…
時には「恋愛」とかも良いのですが…
そればかりだとどうもしっくり来ないですよね。
あと、コミックや小説を安易にドラマ化する最近の流れも
「なんだかなぁ」と思いますね。
いや、悪いという訳ではないのですが…
実際、昔に見た片岡鶴太郎さん主演の「家裁の人」は
コミックが原作でしたが、今だに印象に残るほど
良いドラマだと思っています。
最近、帯ドラマを見なくなったのは、物理的に時間がない
というのもあるのですが…やはり、内容を見るとどうしても
見る気力が湧かないというのが正直なところですね。
やはり、大人のためのドラマが圧倒的に少ないような気がします。
大河ドラマも若手の俳優さんを起用して新鮮さを出そうとするのも
それはそれで良いことなのですが…
深い脚本と俳優の演技力で魅せる大河ドラマも
あっても良いと思うんですけどね。
小さい頃見ていたドラマですがとても印象に残った「いのち」
(不幸の連続の話で、賛否両論のドラマだったそうですが…苦笑)
http://ja.wikipedia.org/wiki/いのち_(NHK大河ドラマ)
最近、このような「心に訴えるドラマ」が少なくなってきたなぁ
と思います。
視聴率に比重を置いた番組作りも深みのあるドラマが
減少した原因のひとつかもしれませんね(-公-;)
by ユキヲ (2008-02-17 19:25) 

菜の花

ユキヲさま。
5月の真清田神社の市にかけつけた「Y」こと「菜の花」です。
ちょくちょくブログのぞかせていただいてます。
向田邦子。いいですよね。DVD買ったのですか!垂涎。。。。
文庫になった『向田邦子の青春』なんか、惚れ惚れする向田邦子さん自身の写真があり、好きです。
あと、昔出た本だけど、『向田邦子の手料理(講談社)』も買ってあります。
「知るを楽しむ」シリーズの『久世光彦さん』は、朝5時台に再放送するのでは、ないでしょうか?私も観たかったので、再放送チェックしてますね。
あと朝日新聞の土曜版beに半年以内に、「久世光彦さん」が3回シリーズで特集されていたのがありましたね。
名コンビ!もう一度観たいドラマですね。
by 菜の花 (2008-02-17 21:47) 

earth

民生の新作、買ったんですね。わたくしもお気に入りです。
「明日はどうだ」も好きですが、「フロンティアのパイオニア」も好き。
「問題な~いぜ!」とつい口ずさんでしまいます。
「イージュー★ライダー」「さすらい」と続く名作だと思っています。
4月の名古屋でのコンサート、チケット取れたので行ってきます。
もちろん着物で(笑。

向田邦子ドラマは深いですよね。気づいているけど知らないふりを
し合っている大人たち、にじみでる女の怖さ。
できれば内緒にしておきたい世界をみせつけられて、ハッとします。
登場人物それぞれ譲れないものがあって、芯が通ってましたよね。
今のTVを彼女が見たらどうおもうでしょうか。

大人のためのドラマがない、本当に同感です。やっぱりハヤリの
若いアイドルのキャスティングありきの恋愛ドラマの時代が
ドラマをダメにしてしまったんでしょうね。今楽しみに見ているドラマって
「ちりとてちん」と「デスパレートな妻たち」そして「鞍馬天狗」です。
時代劇ファンなんですが、どんどん枠が縮小されて寂しい限りです(涙。
by earth (2008-02-17 21:55) 

ユキヲ

>菜の花さんへ
コメントありがとうございます。
昨年の杜の宮市では、足元の悪い中、ご来場いただき
本当にありがとうございました。
お元気ですか?
「向田邦子の手料理」…
その本ではないかもしれませんが…(記憶が曖昧なので)
以前に向田さんの料理の話を読んだことがありました。
たしか、じゃがいものスープが載っていたんですけど
「じゃがいもを最初からおろし金ですりおろしてから煮込む…
 だから早く、とろとろのスープになる。」
みたいなことが書いてあったんですよ。
ああ、何だか人間味のあるレシピだなぁって思いました。
文庫本…
喪服や手袋など、身の回りにまつわる話とか…
本当、身近なものからどうしてあんなに話が広がるんだろうって
不思議に思いながらも、どんどん読み進めてましたね。
(多数の文庫本を実家に置きっぱなしで、かなりうろ覚え…汗)
お財布にもっと余裕があれば、「華燭」の入った
DVDBOXを買うところですが(笑)
ま、ひとまず、記憶の新しいDVDを買うのが一番良いかなと。
まずはじっくり手に入ったDVDを堪能しようと思います(^^)
by ユキヲ (2008-02-17 23:42) 

ユキヲ

>earthさんへ
コメントありがとうございます。
そうですか。earthさんも民生さん、お好きなんですね。
そう!「フロンティアのパイオニア」も私、お気に入りです。
仕事で疲れた時などはあの「問題な〜いぜ!」が
疲れた脳をリセットする効果あるみたいで(笑)
仕事を終えてから家に帰る電車の中でよく聴きます。
知らないうちに民生さんの声が
私の仕事脳のONとOFFのスイッチになっているようです。
「イージュー★ライダー」「さすらい」は
昨年末、実家のゴタゴタで精神的に
かなりグロッキーだった時に何度も聴いてました。
ちょうどこの曲がリアルタイムで流れていた頃は
1つのことに一生懸命だった頃で…
そんなことが良い意味でフラッシュバックして
「あの頃を思い出せ。弱気になるな」って感じで
良いカンフル剤になりましたね。
おかげで仕事に支障をきたすこともなく…(苦笑)
むしろ、次の目標への後押しにもなりましたね。

向田邦子さんのドラマ…
掛け値なしの言葉が飛び交う、人間味のある世界でしたね。
現代の人なら、目を伏せてしまうことや隠しておきたいことを
向田邦子さんは、真正面から書いてた人ですよね。
だから社会の一部しか知らない当時、中学生の私でも
はっとしたり、心をえぐられるような思いをしたんでしょうね。

テレビ番組…
最近、本当テレビ番組がつまらないです。
私、平日はほとんとNHKな人なので
バラエティ好きな相方には渋い顔されてます(笑)
月曜日…鶴瓶の家族に乾杯
火曜日…プロフェッショナル仕事の流儀
水曜日…ためしてガッテン
木曜日…鞍馬天狗
金曜日…プレミアム10
土曜日…土曜ドラマ「フルスイング」
あとは9時から「ニュースウオッチ9」
そして、日曜日は日曜美術館と食彩浪漫ですからね。
どんだけNHK見るんだ?ですよ(笑)
もちろんお笑いも好きだし、民放も見ます。
(実際、竹内結子さん好きで、月9も録画予約してますからね)
でも本当に稀です。
「鞍馬天狗」…いいですよね。
「あぐり」以来、久しぶりに野村萬斎さんのいきいきした
演技をテレビで見る事ができ本当に嬉しいですし…
脇役の方々の演技も絶品。
音楽がまた服部隆之さんで…ドラマをさらに盛り上げてますね。
そういえば…NHKの時代劇、4月からは土曜の7時30分からとか。
時代劇枠…本当、放送時間の移動が多いですね(滝汗)
とはいえ、昨年すっかりはまってしまった「居眠り磐音」が
9月に帰ってくるので本当に楽しみです。
あと昨年の時代劇「風の果て」での好演が印象に残っている
「福士誠治」さんと現在「フルスイング」で爽やかな先生役を
好演している「斉藤工」さんを主にして、4月からの時代劇が
放送されるということでココロ踊っているユキヲです。
by ユキヲ (2008-02-17 23:46) 

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