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「岐阜市民会館:平成二十三年度 秋 西コース 松竹大歌舞伎」 [芸術etcのはなし]

9月23日(金・祝)
今年の三連休は前半と後半があって…
私自身、どう過ごそうかと思っていたのですが
家にいたらいたで、普段できないことができる訳で…
とはいえ、せっかくなので、
前半には、相方と共に飛騨高山へ出かけました。
(これはtwitterの方で色々と画像をアップしてましたが
 また時間があればブログにきちんとまとめたいです。
 が、これもいつになることやら…苦笑)

で、後半はといいますと…

岐阜市の広報で松竹大歌舞伎の案内を見つけたのですが
その配役が片岡仁左衛門さんをはじめ、
孝太郎さん、愛之助さんという私としては何とも魅力的で…

(注)
※仁左衛門さん観たさと、歌舞伎座のさよなら公演ということで
  以前に東京まで出かけたこともありました。はい。
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2010-09-04-3

さらに上演日は、祝日だし、市民会館だし…
行けなくはないよねと思いつつも
なにぶん、9月、10月は美術展などのイベントも多く
予定がブッキングする可能性もあり、さらに間の悪いことに
この時期は私自身の本業が繁忙期ということもあり
体調次第でギリギリまで待ってみて、
行けそうなら行こうと思って、結局、
ようやく「行こう!」とふみきったのは、1週間前でした。

201109_大歌舞伎.jpg

松竹大歌舞伎の全国巡業。
毎年、全国公立文化施設協会の主催によって行われるのが
こちらの全国巡業の公演。
その歴史は古く、44年もの間、こうして巡業が実施されています。

通常であれば東コース、中央コース、西コースという形で
全国津々浦々を巡業するのですが…
折しもの東日本大震災で東コース、中央コースの開催が中止となりました。
しかし、この岐阜での公演を含む、西コースの公演は開催されるはこびとなり
私もこうして足を運ぶことができたという訳です。

とはいえ、今回のこうした震災の影響で
開催までの道のりは一筋縄ではいかない中で
こうして公演を開催してくださった松竹の関係者の方々には
感謝、感謝でございます。

さて、この松竹大歌舞伎の全国巡業。
たしか、昨年は松本幸四郎さんの「勧進帳」だったと記憶しています。
これも観たかったんですけどね…
昨年の岐阜での巡業はたしか夏だったはずで…
その頃はどうしても落とせない筆記試験でいっぱいいっぱいで…

「残念無念」

幸四郎さんの「勧進帳」…いつか観たい演目でした。
ま、そんな経緯もあり…
そして今まで、御園座、歌舞伎座とある意味歌舞伎に適した
ハコでの鑑賞が多かったので
この機会に市民会館などのホール系での巡業を一度
鑑賞したいと思いながら…迎えた23日(金・祝)

岐阜市民会館です。

随分前ですが、私が鎌倉で鑑賞した岐阜出身の建築家、坂倉準三氏
神奈川県立近代美術館 鎌倉の設計者でもあるのですが…

※以前、そちらでの展覧会に出かけた話もしています。
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2009-09-11

「ここ、岐阜市民会館も設計されているんですよね」

1968年には第9回BCS賞(建築業協会賞)を
受賞しているこちらの建物。
こんなレリーフもあるんですよ。

建築賞.jpg

と、以前に学んだことも復習しつつ…
ホールで大歌舞伎を鑑賞してまいりました。

今回の岐阜市民会館での大歌舞伎。
A席は1階の最前列から20列まで
B席は1階の21列から最後列である23列、そして2階のたしか数列まで
C席は2階の後方となっておりました。
さすが市民会館での公演ということで
席のお値段もお値打ちで、A席でも6,000円
B席は5,000円そしてC席は3,000円。

「名古屋の御園座の1等席のほぼ半額でA席で鑑賞できる訳ですね」

ありがたいことです。

さて、今回の演目は、最初に片岡愛之助さんが、
血気盛んで艶やかな曽我五郎を演じる「雨の五郎」

そして続くは、片岡仁左衛門さんが演じる
心がゆがんでいるという意味の「いがみ」という通称を持つ
小悪党の「権太」を軸に
平維盛の家族と、権太の実家でもある鮓屋の家族の物語が
き来しつつ物語が繰り広げられる

「義経千本桜」の三段目の二幕
下市村茶店の場
釣瓶鮓屋の場
の演目でありました。

曽我五郎といえば…曽我物語で有名な曽我兄弟のうちの弟の方ですね。
弟ということもあるのか、元来の性格なのか…
基本的に歌舞伎ではやんちゃな姿で登場することが多いこともあり
結果的に派手な衣装で登場するので人気の主人公ですね。
「外郎売」の方がおなじみなのでしょうか?

あと義経千本桜は、一度拝見したいと思っていたので
今回、叶ってうれしかったですね。
普段であれば三段目も釣瓶鮓屋の場だけの場合が多いそうですが
今回はその前置きともなる、下市村茶店の場から始まるので
その後のつづく、釣瓶鮓屋の場のお話がいっそう深みを増し
心に迫ってくるという演目の流れです。

そんな訳で今回は地元で予想以上に歌舞伎を堪能することができました。


まずは「雨の五郎」

あらすじとしては…

春雨の夜、蛇の目の傘をさした曽我五郎が、
大磯の遊女化粧坂の少将からの恋文を手にして、廓へ向かっている。
五郎と少将は深い仲。五郎は父の仇討ちを心に秘め…
(チラシ裏面に掲載されていたものより、抜粋させていただきました)

愛之助さんの姿をこうしてきちんと拝見するのは
たぶん初めてなのですが…
一見すると、素顔が甘いマスクの好青年といった雰囲気なので
公家などのお役がお似合いなのかなと勝手に想像していた私は
父の仇討ちを心に秘める、血気盛んな曽我五郎を
どうやって演じられるのかと、色々な意味で楽しみにしていたのですが
その期待を良い意味で裏切ってくれる、
豪快でありながらも、それでいて時に艶やかな伊達男な…
(今でいうと、イケメンというところですかね)
の振る舞いも垣間見ることができ
時の経過とともに曽我五郎の魅力に、すっかりはまってしまい…
舞踊が終わってしまった時には、もっと観ていたという気持ちと
もう観ることができないという気持ちが交錯して
少し寂しかったですね。
はい。愛之助さんの曽我五郎、目にしっかりと焼き付けておきました。

続いては、「義経千本桜」

あらすじとしては…
平維盛の奥方若葉の内侍と子息六代君は、小金吾を伴って維盛の行方を探している。
三人が下市村の茶店でひと休みするところに、
いがみの権太が現れ、小金吾は金を騙し取られた上、
追手に追われた内侍と六代君を逃した小金吾は、壮絶な討死を遂げる。
そこへ権太の父の弥左衛門が通りかかる。
実は、維盛は弥左衛門が営む鮓屋の奉公人としてかくまわれていた。
弥左衛門は、倒れている小金吾の首を切り落とし、家に持ち帰る。
 鮨屋(すしや)では、弥助と名を変えた維盛と、
弥左衛門の娘お里と夫婦の約束をしている。
ここへ権太が現れ、母から金を騙し取るが、
弥左衛門が帰宅したので、金を鮨桶に隠して隠れる。
 その夜、内侍と六代君が宿を求めて鮨屋を訪ねる。
再会を喜ぶ三人だが、お里は弥助が維盛だと知り、嘆き悲しむ。
そこへ鎌倉方の梶原景時が現れるという知らせが入るので、お里は三人を隣村へ逃す。
しかし、これを聞いていた権太は、褒美目当てに三人を追って、鮨桶を持って駆け出す。
やがて、維盛の首と内侍親子を縄で縛った権太が現れ、梶原に引き渡すのだが…
(チラシ裏面に掲載されていたものより、抜粋させていただきました)

私は平成22年の3月に東京の歌舞伎座での公演の第三部を観覧。
その際に、初めて仁左衛門さんを拝見しました。

十三代目 片岡仁左衛門 十七回忌
十四代目 守田勘弥 三十七回忌 
追善狂言

菅原伝授手習鑑
一、道明寺(どうみょうじ)
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2010/03/post_54-Highlight.html

その際に、私のイメージとして強い
「気品ある殿方」そのものの菅丞相の役をされていた仁左衛門さん。
なので、今回の荒くれ者の権太は最初
「どういう姿と立ち振る舞いになるのかしら?」と楽しみ半分、
そして今まで私が観たことがない故に不安が半分だったのですが
話が展開するにつれ、権太は、ただの荒くれ者ではなく
時に我が子に優しい表情も見せる、子に甘い父親であり
時には実母に甘える困った息子でもあり
(ま、泣きついてお金をもらうのですから情けない姿ではありますけど…)
様々な人情味あふれる表情を持つ、ひとりの男性ということに気づき始めます。
そしてその場面、場面で魅せる仁左衛門さんのお姿を
場面を追うにつれて「仁左衛門さんこそ、権太なんだな」と
権太の姿がすーっと、心に入っていき
最後に権太が両親達への最後の親孝行を観た時には
思わず目が潤みました。

201109_大歌舞伎1.jpg

さて、今回特に印象的だったのは、
「雨の五郎」の曽我五郎
「義経千本桜」の下市村茶店の場で小金吾を熱演されていた
片岡愛之助さん。

201109_大歌舞伎2.jpg

様々な、場面、場面で、心奪われましたね。
特に印象的だったのは、
権太にいいがかりをつけられ、怒りをこらえながらもやりとりする
あの思わず笑いがこみあげてきてしまう軽妙でありながらも
もどかしいやりとりの場面。
権太役の仁左衛門さんとのかけあいが秀逸でした。
そして、若葉の内侍・六代君を藤原朝方の追っ手より
命をかけて守るところ。
なんといっても、一番印象的だったのは
この場面で登場する独創的なタテ。
捕手が放射状に縄をはりめぐらし、小金吾を取り込むのですが
その中央で見得を切る小金吾の姿、大変見応えがありました。
片岡愛之助さん…
また機会をみて歌舞伎でのお姿、ぜひ拝見したいなと思いました。

そしてもうひとつ印象的だったのが
「義経千本桜」で

201109_大歌舞伎4.jpg

片岡秀太郎さん演じる「弥助(実は三位中将維盛)」と

201109_大歌舞伎3.jpg

片岡孝太郎さん演じる鮓屋の「お里」のやりとり。
よもや、三位中将維盛とは知らない「お里」は
祝言をあげる嬉しさでいっぱいで、弥助をかき口説くのですが
これがまた、愛らし町娘の姿そのもので
観ているこちらも思わず顔もほころびます。
しかしそこに一夜の宿を求めてやってきたのが、
弥助こと三位中将維盛の妻子でもある内侍と六代君な訳です。
次第に事実が明らかになり、自分が愛していた人が
実は三位中将維盛であり、さらに妻子がいたことを知る「お里」
この心情の変化もまた見所であり、
その苦しい胸の内がつま先から指先の振る舞いで
こちらにもじんわりと伝わってきました。

ここで私が注意して鑑賞したのが
三位中将維盛である弥助を演じる片岡秀太郎さん。
実はこの演目の中で
権太の女房でもある「小せん」も演じているのです。
この演じ分けがまた秀逸で、
さすがベテランが魅せる演技…と、釘付けになっておりました。

会場で販売されていたパンフレットに掲載されていた
仁左衛門さんのインタビューにもあったのですが
義経千本桜は初段から五段目まである演目で
その中から抜粋してそのまま演じると、
たとえ必要な台詞でも理解が難しい部分もあるそうで
それを仁左衛門さんは、より分かりやすく、そして
歌舞伎を初めて観る方々にもその場面、場面で楽しんでいただけるようにと
台本に手を加えていらっしゃるそうです。

そして、この義経千本桜は上方(関西)と江戸(関東)では場面、場面の
権太の見せ場なども違うそうで
仁左衛門さんは、上方ということに囚われることなく
見る側の心に、より一層印象が深まるように
江戸風の演技も取り入れ、バランス良く仕上げているそうです。

確かに、私も観ているうちに、すーっと物語の世界に入っていけたのは
仁左衛門さんの台本の推敲、そして見る側の立場を考えてての
演出とがあいまってのことなのだと観賞後、納得した次第です。

いつかは観たいと思っていた演目でしたので、
それを大好きな片岡仁左衛門さんが演じられる演目を
地元で拝見できたこと、本当にありがたいなと思いました。

さて、最近、私個人として気になるのは…
先日、市川中車の襲名が報道された
香川照之さんの歌舞伎界への挑戦です。
まあ、賛否両論あるようですが…
私個人としては、元々役者さんとして大好きな方でしたので
歌舞伎の舞台でまた新しい一面が拝見できそうで
素直に楽しみです。

という訳で、駄文ながら先日の歌舞伎鑑賞の分をまとめてみました。
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コメント 2

菜の花

渾身の歌舞伎レポート。ありがとうございます!
仁左衛門さん。愛之助さん。。。魅力的な方たちで、華のある方たち。。。ホント素敵な時間だったろうな、と拝察します。(私もほかの予定を入れすぎなければ、行けたかなあ。。。まあほかの予定を優先してしまったし。。。でもこの配役で、この巡回コースの値段はお値打ちと思いました)
ユキヲさんほどではありませんが、私も今仕事が超多忙(涙)+職場のマンパワー不足で・・・でも好きな「本業」ですから、諸先輩方に仕事のアドバイスもらって、毎日取り組めることからコツコツやっています。
そんな中、ユキヲさんのブログ・twitter情報などから、私も気になった情報をピックアップしておき、活用しています。ありがとうございます。
とはいえ、多忙なのでどうぞ無理せず、マイペースでブログなど更新してくださいね。
コスモスなどが楽しめて、秋らしくなりました。どうかお体ご自愛ください。


by 菜の花 (2011-10-14 20:07) 

ユキヲ

>菜の花さん
コメントありがとうございます。
すっかりマイペースに甘んじてこちらのブログの更新が
滞っておりました。
twitterの早さ、負荷のなさからすると…
このso-netのブログは本当に重いです。
(精神的なものではないですよ…笑)
サーバーが良くないのか…更新するのにエラーも多々あったりと…
それもここ最近のブログの更新が滞っている理由です。
ここはここで、今まで更新した記事もあるので
止めるつもりはないのですが…
mixiぐらいの動きの軽さがあればなぁ…とは思ったり。

twitter…本当、しょうもないことないことばかり
つぶやいているので…逆に活用されるようなものが
あったかどうか思い返してみたりしています(苦笑)


by ユキヲ (2011-11-05 22:37) 

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