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「三重県立美術館:福田繁雄大回顧展」 [展覧会のはなし]

ごぶさたしております…
ブログの更新が滞ってしまいすみません。
あまり仕事が忙しいことを理由にしたくはないのですが…
最近、ようやく落ち着いてきました。

ただ、仕事に忙殺されていた訳ではなく…
きちんとバランスを取るために、
時間を作っては、今年の夏はいろいろと出掛けておりました。
という訳で不定期にそのお話を更新していく予定です。
まずは…随分前になってしまいますが…7月のお話を…


7月15日(金)
有給休暇を取って
名古屋から…近鉄電車に乗って、電車にゆられること…

「約50分」

到着したのは…

「三重県津市」

そして日本一、駅名の短い駅

「津」

という訳です。
それにしても…今まで四日市ぐらいまでだったのでね…

「遠く感じるなぁ…」

目的地はこちらでした。

近鉄「津」駅から徒歩10分ほどの場所にある…

mie1.jpg
「三重県立美術館」

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しかし…緑が多いですね…三重県立美術館。

mie3.jpg

mie4.jpg

mie5.jpg

この日、お天気も良かったから余計にね…緑が鮮やか。

でもね…私のことです。
ここにやってきたのには…目的があるのですよ。

それがこちら…

mie6.jpg

「ユーモアのすすめ 福田繁雄大回顧展」

もう完全に私のストライクゾーンですね…はい。

私の7月の忙殺された日々を乗り切れたのは
これがあったからです。
これを楽しみにしてここまで来たのです。

わざわざ三重県までやってきたのは…その展示の規模。

ポスター210点、、立体作品100点以上。
そしてアイデアスケッチなどの含めた展示品が
一挙に展示される訳です。
この機会を逃したら…

「今度いつお目にかかれるか分からない」

そんな訳でここ三重県津市までやってきた訳です。実際、会場を訪れた私は圧巻でした…

「これほどに福田繁雄のポスターが展示されているとは」

昔、今はなき大阪の天保山のサントリーミュージアムまで
田中一光(東京オリンピックのポスター制作で有名)氏の
展覧会以来ではないでしょうか?
これほどの多数ポスターが展示された空間。

このポスターに壁面が埋め尽くされた空間が
会場の最初のフロアなのですから…
私のような者には本当に夢のような空間。
今まで本や雑誌でしか目にすることができなかったポスター
そして今回、初めて見るポスター
様々なポスターが、当時、印刷された質感そのままに
原寸サイズで展示されていました。

FukudaPoster.jpg
福田繁雄といえばこのポスターと言われている
「VICTORY 1945(1975年)」
※図録に掲載されたものを撮影しました。

こちらのポスターは
「ポーランド戦勝30周年記念国際ポスターコンペ」で
最高賞を受賞した作品です。

大砲から発射された砲弾が、その大砲に向かい、今にも大砲に
当たりそうなこのビジュアル。
確かにありえないビジュアルではあるものの
このビジュアルで分かるのは…

「自分が放った暴力は、自分自身に返ってくる…戦争とは、無意味なもの」

これほど戦争の無意味さを
瞬間的に魅せるポスターはないでしょうね。

この作品を最初に観たのはたぶん中学の美術の教科書か資料集じゃなかったかな…
それから何度も私も学生になってから図録などで目にしていましたが
この日、初めて実物大のポスターと対面することに。

もう圧巻でした…
オフセット印刷で仕上げられたそのポスターの
大砲と砲弾の黒光りするその重々しい質感と
それに対比して自然と「警告」を感じずにはいられない
全面イエローの背景。
ポスターのメッセージがひしひしとこちらに伝わります。

他にも様々なポスターがあり、
「日本のエッシャー」と呼ばれる福田繁雄氏の特徴を
ぎゅっと詰め込んだようなユーモアあるポスターも
たくさんありました。

その中で私は、これが印象的でした。

福田繁雄氏の初期の頃の作品ですが…

Fukuda22.jpg

左:見て口をとざす日本人
右:はなのような国
(ともに1965年)
※図録に掲載されたものを撮影しました。

これ天地を逆転させると…意味が違ってくるんです。

Fukuda23.jpg
※図録に掲載されたものを撮影しました。

さきほど「見て口をとざす日本人」だったポスターは
「見ないでさわぐ日本人」

「はなのような国」だったポスターは
「基地のような国」に…
花の茎が基地から飛び立つ飛行機のシルエットとリンクする訳です。

これには後頭部をガツンとやられました。
そして、これこそが、ポスターのメッセージ力。
しばらく足が動きませんでした。

他にも、様々なポスターがありましたし
私としては、福田繁雄氏がポスターや
立体作品のアイデアを練っている過程が見える
アイデアスケッチの展示はとても刺激になりました。

しかし…私個人の印象として、何より今回の見所は立体作品。
100点以上と一口に言いましても…
それはもう…どれも見応えがあるので

「濃密な空間となっております」

その中で私個人が印象的だったものをいくつか…

まずは福田繁雄氏が誕生した娘さんをきっかけに
造り始めたという、木製のおもちゃ。

FukudaWood.jpg
※図録に掲載されたものを撮影しました。

娘さんへの愛情、そして福田氏の遊び心が
あいまった…そんな温かみのあるおもちゃ。
小さい娘さんと一緒に楽しんでいる
福田氏の優しい表情がおもちゃ越しに浮かぶような…
そんな作品でした。

FukudaCup.jpg

そして、カップ&ソーサー。
※図録に掲載されたものを撮影しました。

これがもう…観ていて飽きないんですよね。
ポスターもそうですが…

どれも仕掛けがあるので…
展示してあるガラスのケース越しに
思わず笑顔に。

カップに入ったコーヒーが外に?と勘違いしてしまうほどの
右上の「コーヒータンク」
そしてカップを縦横無尽に歩く人物が印象的な
右中の「クライン氏の散歩」の
カップ&ソーサーが私はお気に入りです。

さて、最後にご紹介するのがこちら。

Fukudashade.jpg

「ランチはヘルメットをかぶって…」(1987年)
※図録に掲載されたものを撮影しました。

これは…私、中学の頃に美術の教科書に観たんですよね。

「バイクの影がなぜに作品に?」

最初は何が何だかよく分からなくて…
でも、タイトルと照らし合わせて、よくよく観てみたら…

「!」

そう、これ、影がバイクなだけであって
影の主は、フォークとスプーンとナイフなど
848本を溶接して造った金属の塊なんです。
だから…「ランチはヘルメットをかぶって…」というタイトルな訳です。

「こんな作品…あり?」

中学生当時の私には衝撃的でした。そして…

「この作品を制作した人って…何者?!」

これが私の福田繁雄氏の名前を焼き付けることになった作品でした。
この作品を最初に観た時から、20年以上の時を越えて
今回、この作品の実物を目できた感動は…
何に例えたら良いだろう。

昔、イギリスに初めて出掛けた時に
美術館でゴッホのひまわりをこの目で観た時にも似た感覚。
でもそれ以上だったかも。今回は。

本当、その場を離れたくなかったし、
美術館を後にするのが惜しいと思ったほど。
帰りたくなかったです。

右前方から、左前方からそして正面から…
本当にじっくりと鑑賞しました。
そのひとときは本当に、胸がいっぱいになりました。
大げさですが…生きていて良かったと思いました。

福田繁雄氏がもうこの世にいないことは
とても残念なことです。
もう新しい作品を見る事はかなわないのですから…
でも、こうして彼が生涯、頭の中で構築した
ユーモアのある引き出しの数々が
このような形で目にし、体感できることが
私には、それだけで幸せなことに感じました。

来年の2012年の7月まで
川崎市、いわき市、広島市、高崎市、札幌と
各地を巡回する予定のこの企画展。

そのトップバッターとして三重県立美術館で開催された
展示を鑑賞できたことは大変有意義な1日となりました。

■おまけ■

福田繁雄氏のグッズがミュージアムショップに数点並んでおりまして…
ついお財布の紐がゆるんでしまいました。

FukudaItem.jpg

鳥獣戯画好きのわたしにはたまらない手ぬぐいのプリント。
そして一筆線に、ファイル。
(はい。どちらも我が部屋で増える一方ですよ…笑)
一定の金額をお買い上げすると、三重県立美術館では
ポスターがいただけたので、私、いただいてまいりました。
ええ、大満足です。

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