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「あいちトリエンナーレを巡る〜栄会場(3)愛知県美術館8階〜」 [展覧会のはなし]

あいちトリエンナーレ
http://aichitriennale.jp/

名古屋市美術館とその周辺を鑑賞してみたり…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26

そこから長者町エリアに進み、立体や映像作品を堪能してみたり…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2010-10-27

大きなうさぎや、蝶の大群に出会ってみたり…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2010-10-28

ピカピカと光る3Dアニメーションや、表面が磨かれた不思議な作品を目にしてみたり…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2010-10-28-1

すっかり昼食を忘れていたということで…きしめんを口にしてみたり…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2010-10-28-2

人間的マッキントッシュコンピューターや星の木漏れ陽に心躍ったり…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

ミニマルなアイテムを使った幻想的な映像に心奪われ、大きな作品に驚いたり…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2010-10-31


さて、いろいろ巡ったこの日最後に8階に降りてきました。

こちらにもまだまだ作品が展示されています。


8階に降りて来て最初に感じたのは…

「アイデンティティや現代の問題点を再認識するような作品が多いな」

ということ。

まあ、切り口は人間そのものであったり、
自分の生まれた国の歴史をふまえてのことだったり…
ズリカ・ブアブデラは「愛」というテーマを軸にして
人間のアイデンティティを深く追求していたように思うし
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/zoulikha-bouabdellah.html

スティーブン・コーヘンは、自らの身体と表現技法で
見る側に必死に何かを訴えていたようにも思えるし…
http://aichitriennale.jp/artists/performing-arts/steven-cohen.html

その中でも特に印象深かったのは…

曾建華(ツァン・キンワ)
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/tsang-kin-wah.html

彼の作品は複数のプロジェクターを使って、
床にキーワードとなる文字を照射させる作品。

靴を脱いで、薄暗い空間に手を入れると…
空間の端から…曲線を描きながら…猛烈なスピードで床を這い回る英文字。
その尋常じゃない動きと速度に…何かしら恐怖すら感じる。
そして次第にその動き回る英文字が蛇のように…そして最後には
大蛇のように私の足元を襲いかかる。

「怖い…だけど観てしまう…」

あまりのスピードに英文字の意味までを追うことが難しいものの…
テキストとパターン…あぁ、私がどちらも好きなモチーフだから
それで惹かれたのかもしれないけど。
それ故なのか…この人の作品をもっと観てみたいとも思いましたね。

あれから調べてみたら…インタビュー記事があり思わず熟読。
http://www.shift.jp.org/ja/archives/2009/01/tsang_kin_wah.html

次にこの人の作品をいつ観ることができるのか…
それから、次にこの人の作品を観た時には自分はどう感じるのか…
そんなことを考えながら
しばらくここでもずっと動く英文字を見つめてました。


あとは…
タチアナ・トゥルーヴェ
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/-tatiana-trouve.html

整然とした部屋なのに…

「何かおかしい…」

何やら部屋のような空間をはみ出して流れる液体。
隅にある小さいドアは向こう側が見通せるようでそうでない構造。

「普通じゃない空間」

さながら、アートサスペンス…

そんなイメージで一人想像しながらゆっくりと作品の周囲を鑑賞。

結局、ネタバレになってしまうのですけど…
小さいドアが見通せなかったのは、奥に鏡が立てかけてあったので
直角の先が観えていたというオチでした。


そして…
ヘマ・ウパディヤイ
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/hema-upadhyay.html

個人的にジオラマ展示とかが大好きな私は…

1020県美術館16.jpg

「この密集した空間に乱立している都市空間に高揚感すら覚えて…」

さらにその密集した空間が…

1020県美術館15.jpg

「壁面に直角に乱立していることにさらなる高揚感を覚える」

1020県美術館14.jpg

とはいえ、まるで都市に板挟みになっているこの瞬間…なぜだろう…

「たまらない気持ちになる」

都市の叫びを浴びせられるような…そんな圧迫感。
元々、この通路も1人通ることにギリギリの状態なので
近くに立っていらっしゃったスタッフさんからも

『お手持ちのバッグなど、作品に触れないようご注意ください」

と一声あるせいも十分関係していると思いますが…

「思わず息をのむ」

クラフト的な温かみを感じる観た目とは違い、
逆に自分が作品の中心に身を置いてみると
また違った感覚を受けて…非常に興味深い作品でした。

そして最後は…
宮永愛子
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/-aiko-miyanaga.html

ナフタリンでかたどった作品や塩の結晶を育てた作品が
代表作の彼女。
今回は会場の床と天井をつなぐ糸に
名古屋市内を流れる堀川から抽出した塩で結晶を育て
そしてサンダルや靴などをナフタリンでかたどった作品を
船の中に閉じ込めて、ガラス越しに見せてくれます。

ナフタリンといえば…そう、防虫剤などに使われているものです。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうが…
ナフタリンは固体から気体になる特徴があり、
それ故に時間の経過と共に形がなくなっていきます。

私が鑑賞したこの日にはもうサンダルなどの面積の少ない作品は
ほぼ完全に気体化した状態で…
男性用と思われる靴などが残っている状態でした。

近くにいらっしゃったスタッフさんの話では…

『サンダルもトリエンナーレ開催開始当初は
 しっかりと形もあったのですが…
 もうここ最近はすっかり形がなくなってしまいました。
 とはいえ、気体となったこれらの作品は
 この覆われているガラスの内側に結晶として存在しています』

とのこと。

「なるほどなぁ…」

時間の経過と共におぼろげになる作品達…

なんとなくですが…

「楽しい経験をした思い出とリンクする」

人それぞれ…確かにその場面で鮮明に五感に記憶されると思うのですが…
時間の経過と共に…

「その出来事は段々と鮮明さを失っていく」

とはいえ…確実に人の中に残っているのは…

「楽しい思い出という一つの幸福的要素」

それが…

「あのガラスの内側に集まった結晶達なのかなとも思えて…」

なんとなく、そんな気がしました。
そして…

「今日、多く鑑賞した作品達も…時間が経つにつれて
 こうして自分の心の中で化学反応を起こして
 楽しい出来事として頭の中で少しずつ結晶みたいに
 形成されていくのかもしれないな…」

と、ふと思ってみたり…

この日、最後に目にした作品。
なんとなく私の中でのトリエンナーレをしめくくる
最後の作品にふさわしいものでした。


今回、あいちトリエンナーレを通して
こうして様々な作品を鑑賞して思ったのは…

「切れ切れでも良いから…何日かに分けて
 隅々まで観て廻って…特に気に入った作品はもう1度観たかった」

という個人的反省ですね。
実際、納屋橋会場もあったにもかかわらず…

「観る事かなわず…」

まあ、点在している会場故にどうしてもここはあきらめなければならず…
それが今回悔やまれることですね。
(ま、何といっても私のスケジューリングの甘さが原因ですが…)

様々な国の作家さんの作品をこうしてまとめあげられて行われた展示は
見る側としては本当に贅沢というか…大変良い体験となりました。

そして素直に「3年後がまた楽しみだな」と。

また様々な作品を通して発見や驚きが体感できるのは
楽しみだなと。そう思います。

という訳で私が観て歩いたあいちトリエンナーレのレポート。
何だかまとまりのない長文ですみません。
最後まで読んでくださった方、いらっしゃいましたら
つたない文章におつきあいくださり、
本当にありがとうございました。

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tanuki

こんにちは~(^^)
ユキヲさんも、トリエンナーレを存分に堪能されましたね!
膨大なレポ、おつかれさまでした♪
全部を一度に読むのはなかなか大変なので、最初はかいつまんで読ませていただきました。あとでまたじっくり読みますね(^^ゞ

草間さんの水玉プリウスを見られたのはよかったのですが、オアシス21に立ち寄っていたにもかかわらず、屋上に作品があることを全く知らずに帰ってしまったことをすごく後悔しています。(泣笑)
ユキヲさんの記事で観ることができてよかったです♪
あと、広小路ビルの会場にも寄る時間を作れなかったので、これまたユキヲさんの記事で作品を拝見できて嬉しかったです(^^)
長者町会場、あちこちに点在していて、私も全会場を周ることはかないませんでしたが、有料会場はすべて周れてなおかつ各会場の作品に非常に魅了されたので大満足でした。(^^)

英文のシュルシュルと這いまわる作品、私も大好きです。
すばやく動き回るのを急いで踏みつけたりして遊んでました(笑)
ナフタリンの作品も印象深いです。
時間の経過とともに作品の変化も楽しめる、という試みは面白いですね。

納屋橋会場、ブログの記事にも書きましたが、独特の印象の作品ばかりでした。
心の奥底にグッと迫ってくる表現の数々に、混乱しながらも快感を覚えるような・・・そんな空間が広がっていました。

私も今回のトリエンナーレは、一泊二日の訪問では全く時間が足りず、とても名残惜しいです。
今から三年後が本当に楽しみです。(^^)
まだまだコメント書きたいですが、キリがないので、いつかユキヲさんにお会いする機会があったら、とことん語り合いたいです(笑)
詳しいレポ、ありがとうございました♪



by tanuki (2010-11-02 10:50) 

ユキヲ

> tanukiさんへ
nice&コメント、そして長文の記事に目を通していただき
感謝、感謝です。
オアシス21…
私も母親から撮影した画像を見せてもらわなければ
見逃してしまっていたかもしれません。
基本、晴れ女なのですが…ここ最近の異常気象(?!)なのか…
出掛ける際に小雨や曇天が多くて…
晴天ならば、テレビ塔と草間さんの作品が
青空にもっと映えただろうなと想うと少し悔やまれます。

広小路ビル…
私はここの作品のポイントが高いですね。
限られてスペースでどれもテイストの違う作品があり
十二分に楽しめました( ´艸`)

長者町会場…
作品それぞれが、各会場のスペースと雰囲気にぴったりと合って
本当に観ていて飽きなかったですし…
この日、結局トータルで1万5000歩ほど歩いていたのですが
長者町を歩いている時には、疲れを全然感じませんでした。
ある意味、様々な作品に遭遇してハイテンションだったのかと…

英文のシュルシュルと動く作品…
あれは圧巻でした。時間と共にざわつく英文字の集団…
今までに体感したことのない感覚でしたね。
とても印象的でした。

納屋橋会場…
tanukiさんのブログで拝見したのと
知人の中で納屋橋会場を訪れた人が何人かいて
詳しい話を聴いたこともあり…
納屋橋会場はあきらめる決心がつきました。
やっぱり1日では…厳しいですね。
今回よく分かりました。

私も3年後が楽しみです…
3年後はできればフリーパスを手に入れて
同じ会場を何度も訪れたいですね。
訪れる度にいろいろと発見もあると思いますし…
3年後…お互いが観た感想など
共有できると良いですね。
いろいろな楽しみが広がるトリエンナーレ。
楽しいひとときでした。
by ユキヲ (2010-11-02 12:45) 

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