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「あいちトリエンナーレを巡る〜名古屋市美術館とその周辺〜」 [展覧会のはなし]

あいちトリエンナーレ
http://aichitriennale.jp/

ライブやワークショップなどの1回完結で
比較的短時間の集中的なイベントであれば
私も時間を工面して参加していたのですが…
今年まで持ち越した資格試験
(そもそも昨年全部取らなかった自分が悪いのですけど)
筆記試験が今年、ようやく通過して、
二次試験まで進みそれが終わったのが10月上旬。
そんな状態でしたので、やはり試験が全て終わるまでは
どうしても心から落ち着かず…
なので、行きたかったあいちトリエンナーレも試験が終わるまで
我慢しておりました。

あと、もう一つ理由があって既に出かけた人の話も
少し参考にしたかったので。
友人、知人の話なども頭の片隅に入れつつ
(驚いたのは母と妹、そしてもうじき3歳になる甥っ子が既に出かけていた…笑)

「自分なりに下調べしてから出かけたかったので」

トリエンナーレは会場が点在していますからね…
できたら効率的に観てまわりたいというのもありました。

とはいえ、気がつけば閉幕まで残り2週間。
週末には混雑し、度々鑑賞待ちの情報を知人より耳にしました。

ですので…

「平日に有給休暇申請」

そして10月20日(水)
やっと、あいちトリエンナーレを巡ってまいりました。

私の予定では9時30分から開館する名古屋市美術館を筆頭に
長者町エリア、そして栄の芸術文化センターのルートを計画してみました。

備忘録代わりに少しずつトリエンナーレを巡った話をアップしていこうと思います。

さて、最初に訪れたのは名古屋市美術館。

「久しぶり…だまし絵展以来ですか?」
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2009-05-17

あれも楽しかったなぁ…

そんな名古屋市美術館ですが…
地下鉄の伏見駅で下車して…徒歩で向かったこの日…
遠目から観て、普段と明らかに違う点が…

1020名古屋市美術館.jpg

「赤色の布が建物に絡んでいる」

その正体は…無数のハンモック。
エクトール・サモラの作品。
タイトルを観ると…「大胆なレジャー」

「大胆すぎる…」

だけど何だか楽しそうな空間に見えるのは、やはりハンモックだから?
この美術館を設計した黒川紀章先生も天国で思わずニヤリでしょうか…



さて、館内に入り…チケットを渡して…
入口をくぐり、最初に目にした作品は…

「嗅覚で感じる作品?」

入口を抜けた後に私を迎えてくれたのは…
オー・インファンの作品。
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/oh-inhwan.html

私がじっと見つめようとすると、スタッフの方から注意事項が…
『こちらの作品はお香でできておりますので…
 チケット等、紙のものはバッグなどへ収めていただけますか?』

そうなんです…作品の原材料はなんと…「お香」
お香の香りに鼻をくすぐられながらも
チケットをバッグに収めつつ、鑑賞する私。
ええ、作品というか…お香はほとんどが燃え尽きており
脇では地道に少しずつ燃えておりました。

とはいえ、もうあと会期も2週間となりましたが…
この作品、ずっと燃えていたんでしょうか?
気になったのでお伺いしたところ…

『はい。防災関係上、閉館後はお香の火は消していますが…
 トリエンナーレ初日から会期中はずっと燃えております。
 一応、予定ではあと2週間で全ての文字が燃え尽きる予定です』

「なるほど…」

確かに、残る文字はあとわずか…
しかし…このたくさん形作られた文字の意味は?

するとスタッフさんよりご説明が…

『こちらは 名古屋市内のゲイバーの店名を表しています』

 「な、なんと?!」

そんなゲイバーの店名を形作った文字が燃えて…
そして灰になっていく…

「そして、なんとなく…夜の街の始まりと終わりを感じる…」

さらに、嗅覚に働きかけるのは、このお香の香り…

「私達が落ち着く香りでもあり、異国情緒を感じさせる香りでもあり…」

妖艶な雰囲気も想像しながら視覚と嗅覚で
一瞬ですが、ゲイバーの空気を体感したような気分です。



さて、続いては…暗がりの空間に進入。
黄世傑(ホアン・スー・チエ )の作品に遭遇。
作品は、バラバラになった機械の部品達が再び合体して、
息を吹き返したような…そんな作品に感じ取れました。



※日本とは別の会場で展示されているものがYouTubeで観る事ができまいた。

そう感じたのは床に配置されていた作品の中にビニール袋のような形状のものがあり
それが規則的に「シュコーッ、シュコーッ」とまるで人工肺のように
リズミカルに縮んだり、ふくらんだりしていたから。

「こうした、いびつなものに惹かれるなぁ…」

なぜだろう…ちょっと人間らしい雰囲気も漂うから?


そして続いては…
塩田千春さんの作品。
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/-chiharu-shiota.html

吹き抜けを利用して掲げられた巨大な白いドレスを
浸食するかのように無数に交錯するのは、チューブの大群。
そのチューブの大群ところどころに配置された小さいポンプが
規則正しく、赤い液体を送り込んでいる。
その姿はまるで人間の血管。

その吹き抜けを突き抜けるほどの大きな作品故にいろいろな思いが交錯します…

「ドレスをかたどった白い布…そのせいか作品全体が
 うっすらと女性に見えてきて…
 人間の血管のようなチューブが交差しているせいか
  子を宿し育てる偉大なる母にも見えてみたり…」

規則正しく動くポンプは…
見つめるうちに次第に心音が聞こえてきそうなほど…
妙に「生」を感じさせ、生々しい印象を私に刻み込んでくれました。



ジェラティンの作品は…床をグルグル回りながら鑑賞しましたね。
場所によって、床のキラキラした部分の色調が微妙に変化するので。
そしてなんとなく彼らが制作した手足の動きなんかも
想像してみたり…間違いなく彼らがいた存在感なども感じたりして…

トム・フリードマンの作品は、一部ガイドブックに掲載されていて
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/-tom-friedman.html

その円の大小と色の濃淡で表現された人のシルエットの作品が
とても印象に残っていたので他にどんな作品があるのだろうと思っていましたが…

「?」

身近な日用品(発泡スチロールや脱脂綿など)を使っての立体造形は…

「不思議な世界」

でも、普段から私達が見慣れたもの…

「彼の手腕で身近なものから異空間に導く指標のような造形物に」

うーむ。面白い。
私は発泡スチロールを細かくして小さな球状にしたものに着色して
島のような立体造形に仕上げた作品が好きですね。
もちろん、ガイドブックに掲載されていた「Untitled」についても
実際間近で見ると神々しくも見えたり…ポップにも見えたりして…
非常に奥深い作品でした。

フランツ・ヴェストの作品は
大きな岩(石)にトルソーに付いているような足をつけ、
色とりどりの着色をほどこしたものを
作品として展示していました。
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/franz-west.html

「きっと…切り立った山の中にゴロンとそのまま転がっていたら…
 何の特徴もないただの岩だったり石だったりするのに…
 なぜだろう…こうして色がつき足がつくとなんとなく人のようにも見えてきて
 石が表情豊かに見えてくる」

私ならあの作品は肩幅の広いちょっと鼻持ちながらない男性にも思えるし…
そうだ、あの作品なら…ちょっと派手なメイクが似合う若い女性かも…

「視覚を通して、じわじわと…自分の中で広がっていく世界」

なんとなく…フランツ・ヴェストさんと対話しているような気持ちになりました。
不思議ですね。


映像で作品を発表していたのは、ラクウェル・オーメラ。
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/raquel-ormella.html

クラフトで作った鳥と生身の人間が登場する映像。
鳥が生きていない作り物なせいか
その独特の切り口の映像に…

「人間が動物に笑われているような…滑稽な雰囲気すら漂う」

うむ…異様な空間。



最後に観たのは地下1階の常設展示の手前にある展示空間を存分に使って
知多郡南知多の篠島の文化や風景を自己の感性で切り取り
表現していた、島袋道浩の作品の数々。
http://aichitriennale.jp/artists/contemporary-arts/-shimabuku.html

これが私は一番面白かったですね。

そこは美術館ではなく…まさに「篠島」

なぜならロビーの一角にタコの干物が展示してあるんです。
一見、美術館に干物なんて可笑しいと思うでしょう。
でもその下の映像を見ていると何ともほほえましいというか…
人間味のある芸術作品にじわり、じわりと見えてくるのですから不思議です。

映像では、新鮮なタコが男性の手によって少しずつ変化を遂げていきます。
ふいに手元が狂って、干物にするタコを地面に落としてしまい
笑いながら水洗いして再び干物を作る男性ですが
手持ちの小刀(?)と身近にある細く割いた竹の棒を使って
時間を追うごとに、そのモニタの上にある干物の形へと変化していきます。

その手際の良さにも感心しましたが…
何より、完成したタコの干物の無駄なく広げられたその全身に

「ある意味、シンメトリーが活きている彼しかできない作品にも感じられる」

他にも魚をさばいている映像などもあって…

「あぁ…身近なところに気がつかない美しいものってあるんだな」と。

芸術っていうとかしこまっているのだけど…
なんていうか…素直に「あ、これ綺麗」と思わせてくれるそんな光景や形。
それがこんな身近にあるんだということを気づかせてくれた
島袋さんの作品は、下町の世話焼きのお兄さん的な
人情味のある作品に見えたのは私だけでしょうか。

他にも面白いものがいくつか…
タコを捕る時に使うタコ壷。
その中に入っているタコが時々、貝殻だったり石だったりを手にしていることがあるそうで…
島袋さんは「いつかタコがこれを持って揚がってきますように」と
キラキラときれいなガラスのビー玉を大きくしたような球体のガラス玉を
海に沈めたんだそう。

「まだこれらを持って揚がったという報告はないです」
というような意味合いの文章が脇に添えられているのを見て
思わずクスっと笑いが…
でも壮大な作品ですよね。
海中のタコと創作するインスタレーションみたいな作品で…
夢のあるインスタレーションだと思いました。

そして大きな人のシルエットが登場したと思ったら…

「篠島で出会った一番大きな男、通称大将の日光写真」

そう、これ…制作風景のシーンが、ガイドブックに掲載されいたので
ずっと気になっていたんです。
つまり…日光に当たらなかった部分が青色で残り、他が真っ白になるんですよね。
日光写真は。

それがまた…こう…輪郭がフラットなせいか…

「オーラを発しているようにも見えて…島人が…より偉大に見えてきましたよ」

塗装が途中で止まっている壁など…
街中にはない、島独特のトーンが満ちあふれる空間はとても和みましたね。
最後に観るのにはとても良い作品でした。

そして…全部の作品を観た後は…常設展示の作品を…

名古屋市美術館に来るとは毎回観ているので…
もう何度も観た作品もあるし…
今回、初めて観た作品もありますけど…
やはり、足を踏み入れてしまうし、観てしまうのですよね。

http://www.art-museum.city.nagoya.jp/collection/index.html

ここ最近のお気に入りは1930年代〜50年代メキシコシティの芸術でしょうか。
独特のトーンと、今まで西洋美術などは機会があれば目にしていた私も
このメキシコシティの芸術のトーンには圧倒されたというか…
逆にパワーをもらいますね。
フリーダ・カーロから日本の北川民次まで…様々な筆遣いの作家の
作品が少数精鋭ではありますが展示されているのが個人的に好きです。

とはいえ、藤田嗣治の乳白色の透明感のある油彩も大好きですし…
モディリアーニの「おさげ髪の少女」を観ると「名古屋市美術館に来たなぁ」と
しみじみします(笑)

個人的に…常設展示の最後のフロアに行く際にふんわりと室内に注ぐ
日の光の雰囲気が私は好きで…
ここはちょっとゆっくりといつも歩きます。
こじんまりとした庭にある作品にも目を向けて…
なんとなく落ち着くひとときです。

久しぶりに名古屋市美術館を訪れましたが
トリエンナーレの作品は比較的、大掛かりな作品が多く
「名古屋市美術館ってこんなに開放感ある空間だったかな?」と
見紛うばかりでした。

まあ、無理もないですよね。どうしても全国巡回系の大規模な企画展となると
作品点数も多いので、それを全て展示するとなるとパーティション(間仕切り)も
多用しなくては展示しきれないですし、区分けされた空間も狭くなりがちですからね。

そういう意味では今回のトリエンナーレで
名古屋市美術館の空間の広がりも再発見できてとても素敵なひとときでした。

さて、時間は午前11時…

「うむ。順調かな」

続いては歩いて二葉ビルに展示されていた梅田哲也の作品を観るため移動。

ロープの先にタイヤだったり、日常見慣れたものがぶら下がっていました。

ボランティアスタッフさんに伺ったところ
これは全部つながっていてロープで全ての仕掛けが動くようになっているとか…

「ほぉ…」

残念ながら私が観た時には動きませんでしたけど…
それが逆にまた創造力をかき立てられて良かったかなとポジティブに
考えながらその場を後にしました…

さて、続くは長者町会場…ここはね…

「心臓破りですよ…」

なにしろ、作品が点在しているエリア。

「覚悟していきましょう」

という訳で長くなりそうな、このトリエンナーレレポート。
トリエンナーレが終わるまでに書き上げられるかどうか…

という訳で不定期に続きます。

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