SSブログ

「デザインのひきだし(10)を思わず買う」 [デザインetcのはなし]

そもそもこの本の存在は1年以上前から知っていました。

大型書店にもなると、こういうデザイン関連の本も
たくさん置いてあるので、最近の私には
ジュンク堂などは魔のゾーンです。

あ、あと…
名古屋市栄にある「愛知県芸術文化センター」
こちらの地下にある「NADiff(ナディッフ)」
http://www.nadiff.com/home.html

あそこなどでも、企画展やギャラリーで知人がグループ展などを
していると寄り道して
「illustration」
http://www.genkosha.co.jp/il/
とか…そういう類いの雑誌をいろいろ手に取り立ち読みしますね。

「最近、三省堂とか…フィルムでパックするから中身読めないんだよね」

やっぱり中見て決めたい訳ですよ。
なので、私はアマゾン派ではなくて、
書店に足を運んで…手に取って目で確認しないと買えません。
特にこういう雑誌は。

そんなある日、見つけたのが…

グラフィック社が出版している「デザインのひきだし」
http://www.graphicsha.co.jp/top.html

こちらの最新刊。

タイトルが…

デザインのひきだし1.jpg

「無くしてしまうのは惜し過ぎる。
 凸版・活版印刷でいくのだ!」

雑誌を手に取って驚く。

「この雑誌の表紙…本当に活版じゃないですか」

手に取った雑誌の表紙には厚手の紙が使われていて
やや文字の角が丸みを帯びている。

私は仕事柄というか…まあ、元々興味があるんで知っていますが…
もう20代の方だと知らない方もいらっしゃるのでは…

活版印刷(かっぱんいんさつ)とは、
活字を組み合わせて作った版で印刷する技法。
またはその技法を使って清作された印刷物のことを言います。
代表的なのは、鉛版ですが…
線画凸版・樹脂版なども活版印刷と呼びます。

説明の通り、アナログな印刷ですので
もう現代では行っている会社は少ないです。
ただ、このアナログならではの良さや味を理解して
続けていらっしゃる方、または利用している方も
少ないですがいらっしゃる訳です。
そういえば、活版で印刷した文字は版をぐいっと押すことで…
文字の角がとれて丸みのある文字となり
目に優しく読みやすいのだというのも風の噂で聞いたことも…

さて、そんな絶滅危惧種にも似た活版印刷。
実は…私、小学生の頃に観たのですよ。活版の機械を。
どこでって?

「父の実家の脇にある物置小屋で」

それも…置いてあるだけではなくて…

「亡くなった伯父が、1文字、1文字、版を拾って組んで、
 刷っているところを観ている」

機械があったことも、伯父がやっていたことも
今だに謎なんですが…

推測するに、ご近所の人に頼まれて
喪中ハガキか、名刺を印刷していたのではないかと。

それ以来、機械を観てないので…
今その機械があるかどうかも全く分からないですし…
あったところで私は動かせませんけど。
きっと錆びついているでしょうし…
まあ、そんな小さい頃に観たという経緯もあって
活版印刷はもう一回、間近で観てみたいなぁというのは
今だに思っています。あわよくばやりたいとも。

まあ、そういったって…
今はいわばデザイン業界の底辺にいる私ですからね(失笑)
そんな私が「デザインのひきだし」を買ったところで
何か起きるのかといったらゼロに等しい。
自虐的かもしれませんが…
DTPオペレーターをやっている以上、
自分の身分はわきまえているつもりです。

ただ…単純に活版にあこがれているだけじゃなくてね…

「活版印刷の構造とか、現代の位置づけなどを知るにはいいかな」と。

ま、今年の夏はバーゲンセールもスルーしたので
ご褒美のつもりで買うのもいいかと。
(季刊誌なのと…印刷見本等も入っているため、1冊が結構するんですよね)
お買い上げ。


とはいえ、理由は他にもいろいろあったんですよ。

先日、おこしをお買い上げしたHIGASHIYAさん
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2010-04-11
こちらのDM等への活版印刷の活用例が紹介されていましたし…

デザインのひきだし2.jpg

デザインのひきだし3.jpg

あとはまあ、特殊印刷フェチとして(笑)
メジウム刷りなどの印刷見本が綴じ込みになっているのは
それはもう…ねぇ…テンションがあがりますよ。
そして印刷見本に紙の種類が書いてあるのも…
いろいろ想像できて楽しい。

さて、本題の活版の話。

いや…ただただ活版印刷をされている方々が素敵だなと。
異国の地で活版印刷を使ってグリーティングカード制作に奮闘する方

デザインのひきだし4.jpg

腕一本で下町で活版を支える方

デザインのひきだし5.jpg

デザインのひきだし6.jpg

皆様、非常にいい顔をしていらっしゃる。
そしていい仕事をしていらっしゃる。

素直に素敵だなと。
とはいえ、それまでに至るまでには大変なご苦労もあってのことと思います。
一応…私も仕事柄、色校正なり、刷り上がりなどを見せてもらうので…
色を出すのが難しい等…工程がシンプルであればあるほど
職人の腕の見せ所でもあるので…
本当、厳しいお仕事だと読み進めて感じました。
ただ、それだけ苦労あるお仕事だと…
やりがいもまた倍なのではと思います。

私も短大時代に…
「印刷理論」という授業がありまして…
そこで印刷の4版を体感した訳です。
ローラーをぐるぐると回して…
1色、1色、色をつけていく訳です。
それも、別の授業で制作した自作のコラージュを
写真の角度とか変えてフィルムも作りました。
「100線ぐらいにしたんかなぁ…あの頃の設定」
もう記憶がおぼろげ…そしてマニアックな授業。
それでしか味わえない知識もあるしテクニックもあり…
楽しかった訳なのですが…

ただ…学生の私でも学生なりに…

私の学生時代当時もすでにコンピューターを使っての
デザイン編集が浸透し始めていた頃で
時代に逆行しているのは薄々感じてはいましたし…
私が今やっているDTPオペレーターという仕事も
結果的にはデジタルがすすんだおかげで出来た仕事ですし…
まあ、ありがたいですよね。素直に…
Macひとつあればいろいろなことができるようになりました。

「そのために、一部の専門の業者さんがなくなったりした訳ですが…」

これ話し出すとまた文章長くなるので割愛しますが(失笑)

まあ、最近の世の中と一緒です。
スピードアップして良いこともあれば…
良くないこともある訳です。
大量生産できることで良いこともあれば…
良くないこともある訳です。

「それぞれ良さがあるからね…どちらが悪いとはいえない」

それは何にしてもそうですよね。
皆さんのまわりにもそうだと思います。

いや…今回、この本を通して様々な印刷の技法をあらためて観て
(仕事柄、よく耳にはするのですが、実際仕事でそういう技法に出会うことは稀。
 なぜならこのご時世、なかなか予算の折り合いが付かないことが多いからです)
活版印刷のようなアナログな部分…やはりこれからも残してもらいたいなと
しみじみ思いましたね。
いやはや、非常に興味深い1冊でした。

--------------おまけ--------------

実はこれも今回の本を買った理由のひとつでもあります。

デザインのひきだし7.jpg

いや、どこにも使う用途はありませんが(爆笑)
こういう遊び心に弱いのです。
nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:アート

nice! 1

コメント 2

whitered

こんにちは。お久しぶりです。活版印刷、すでに懐かしいと言える分野になってきたのでしょうね。私も昔、ミニコミ雑誌の手伝いで印刷屋に原稿を届けたとき、たくさんの活字が並んだ棚を見たことがあります。その頃は、すでに写真製版の時代に入っていたと思います。ipadが生み出されても、たぶん紙製の本はなくならないと思います。手に取るとかひもとくというのは、本ならではでしょうし、読み返すのも本の方がやりやすいでしょうね。何より、本の装丁が素敵ですよね。普及版はデジタルで、愛蔵版は紙の書籍でというふうに二極化していくのかもしれませんね。
by whitered (2010-07-11 09:26) 

ユキヲ

>whiteredさんへ
こちらこそごぶさたしております。
nice&コメントありがとうございます。

そうですね…昔はいただく名刺の名前の部分は
だいたい型押しのようにややくぼみ気味になっていたような
気もします…ええ、たぶんあれが活版でしょうね。
今は企業の特性を反映したロゴ入りや特殊加工した印刷などなど
そういった名刺が増えました。
楽しいのですが…やっぱりあのやや角のとれた明朝体の字体に
私なんかは愛着があります。
なんていうと、あなた、おいくつですか?と言われます(笑)

iPad…
Mac使いの私としては「また凄いもの出したな」
というのもありますが、正直言えば、もう…脅威ですね。
whiteredさんのおっしゃる通り…紙製の本はなくならないとは
思いますが…事実、今の印刷業界は少々混迷気味ですね。
小さい地元の印刷会社はこの10年で激減しましたね。
パソコンの普及、そしてペーパーレスの時代…
これでは仕方ないでしょうね。

とはいえ、紙には紙の良さがありますからね…
whiteredさんおおっしゃる通り、本の装丁はその本の内容を
上手く表現したものから、良い意味で裏切っているもの
思わず手に取りたくなるもの…
いろいろな方々のアイデアが集まってできるものがほとんどです。
ですからそういう意味では本当、紙で印刷することにも
意味はあるとは思うのですけどね…
特に美術品が特集された本や展覧会の図録は
手に取るだけで作品を観た時の気持ちが蘇ったりしますからね。
あれは手に取ることができる印刷物が担う
1つの効果ではないかなぁとも思ってみたり…

まだまだ電子書籍も日本で始まったばかりですから…
現代の活版印刷のように…世の中にあふれている印刷も
電子書籍などと上手く住み分けができると良いなと
私は思っています。
by ユキヲ (2010-07-11 10:35) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。