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「岐阜市歴史博物館へ行く〜後編:武家の女性に変身〜」 [展覧会のはなし]

さて、「岐阜市歴史博物館」を訪れた前半のお話の続きです。
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2008-10-22

土器パズルで頭の体操をした後に向かったのは…
「戦国ワンダーランド」
ジオラマと映像で信長の生涯を岐阜の視点から紹介する
「天下鳥瞰絵巻」などもあり
私達が訪れた際には、家族連れさんが熱心に見入っておりました。

で、今回の本命である「楽市立体絵巻」に足を踏み入れることに…
岐阜歴史博物館楽市.JPG
(こちらは、先月の9月に訪れた際に携帯電話のカメラで撮影したものです)

こちらは織田信長が生きた時代の楽市場の一部を原寸大で復元したスペースで
それぞれの建物に岐阜の美濃の名産の「和紙」や
当時の魚屋の軒先を再現して展示しています。

ここでも体験コーナーがたくさんあります。

例えば…
貝がらをこまにした「貝(ばい)ごま」を実際に回すことができます。
こちらはベイゴマのルーツとも言われるもの。
この日も小さい男の子がボランティアさんに教えてもらいながら
こま回しを熱心にしておりました。

ほかにも、輪鼓(りゅうご)を回したり、盤双六で遊ぶことができ
小さいお子さんでも楽しめる体験スペースとなっております。

が、しかし…私達のお目当ては…もちろん
例の「戦国時代の着物を着てみよう」でありまして…
のれんをくぐった先には…
様々な衣装が並んでおりました。

「おぉ。いろいろあるのですね」

女性のボランティアさんが気さくに
「どうぞ、見てってください」と声をかけてくださり
撮影してファイリングされた衣装の数々を
Miltmozmmerちゃんと一緒に見てみる。

『こちらはね、お市の方をイメージして京都の方で作ってもらった衣装。
 大人の方向きかしらね』とボランティアさん。

そこにあったのは、まさに「功名が辻」に出て来るような
すっきりとしたシルエットながらも
桃色の地に様々な模様が折り込まれた武家の女性のお着物。

「素敵ですねぇ」

Miltmozmmerちゃんは、波形の織り模様の間に
様々な花模様が折り込まれた素敵な衣装を選んで、いざ着付。

とはいえ、あくまで体験コーナーなので、
呉服屋さんで反物を巻かれた方ならご想像がつくと思いますが…
伊達衿をつけた「美容衿」を最初につけて…
http://www.yosooi.co.jp/syohin/01hadagikomono/howto/eri600/eriil.htm
そして、その上から体験用の衣装を羽織って、着付。

ボランティアさんはご年配の女性の方2人と、男性の方1人だったのですが
私の方の着付の担当をしてくださった女性の方は
『もう、私達なんて着付のお免状なんかも持ってないし…
 その場、その場、臨機応変にやらせてもらってるんですよぅ』と
笑いながら着付をしてくださいました。

「何だかこういう年の重ね方したいなあ」と、ふと思いましたね。

というのも、ボランディアの方々が
自分のできる範囲で楽しく地元に貢献されている姿が
とてもほほえましく思えたので。

さて、そうこうしているうちに…武家の女性に変身してしまいました。
お市の方.jpg
いかがでしょう?

ひととき、戦国時代にタイムスリップ。
そして「何だか映画『時空の旅人』みたいだなぁ」とふと思う。
(はい、分かる人だけ分かってください…苦笑)

さて、私がこのように両手に一枚の衣を手にしているのは…
当時の武家の女性が外出する際にはこういったスタイルでお出かけしていたと
ボランティアの方が教えてくださいました。
(そういえば、時代劇にもそんな場面があったような…)

ボランティアさんがとても親切で「カメラがあれば、撮りますよ」と声をかけてくださり
こうして撮影してもらい、最後にはMiltmozmmerちゃんとも
2ショットで撮影してもらいました。

着付などでお世話になったボランティアさんにお礼を言って
体験コーナーの部屋を出ようとした際に、ふと目に止まったのは…

「ビロードのマント」

お笑い好きな私とMiltmozmmerちゃんは同じことを考えてました。

「ルネサーンス!」

どうしても髭男爵が頭の中をよぎります(爆笑)

で、2人共「戦国時代にこんな衣装あったんだねぇ」と口々に話していたら
ボランティアの方が親切に教えてくださいました。

これは、その昔、織田信長が上杉謙信に贈ったとされる
マントをイメージして再現したのだそう。

「戦国時代にビロード?!」

驚きでした。

さらに別の場所のパネルで紹介されていた織田信長の一生を年表で
追っていくと…写真ではありましたが
すばらしい文様がほどこされたビロードのマントを発見しました。

「すごいねぇ」

写真にもあったビロードのマントには「牡丹唐草文様」がほどこされ、
それはそれは素敵なマントでありました。
宣教師からの献上品という説もあるこのビロードのマント。
これには帽子もセットであったようでマントは上杉謙信に
(現在も上杉神社に残されており、最古のビロードとも言われているそう)
帽子は武田信玄(だったと聞いたような…すいません…汗)に贈られたそうです。

ビロートと言えば…
私なんかの小さい頃のよそゆきの冬服なんかだと
(例えば幼稚園の入園式とかに着ていたワンピースとか)が
ビロードの生地でしたので…非常に馴染み深いのですけどね。
はい。ということで調べてみました。「ビロード」のこと。

「ビロード」とは英語では「ベルベット」と呼ばれており、
発祥は13世紀のイタリア。
王侯貴族達の正装には欠かせない生地として重宝されていたそう。
そうそう、それを垣間見る事ができるのが
ルーヴル美術館に所蔵されている
ルイ・ダヴィッドが描いた「ナポレオン1世の戴冠式」
http://www.museesdefrance.org/museum/special/backnumber/napol/napoleon.html
ここに描かれているナポレオンのマントはまさしくビロードですよね。

で、日本にビロードが伝わったのは歴史にもよく出て来る1543年。
ポルトガル人が種子島に漂着した時のこと。
鉄砲を包んでいた布がどうやら「ビロード」だったようです。
ビロードというのはポルトガル語。
だから、その言葉が日本に浸透したんですね。
しかし、当時のポルトガル人はビロードの製法を日本人には
伝授してくれなかったのだそう。
なるほど。だからとても貴重で価値あるものだったんですね。

で、結局「ビロード」が日本で作られ始めたのは江戸時代に入ってから。
なんでもオランダ船に「ビロード」の生地には欠かせない糸のループを作る
銅線を見た日本人がそれをベースにして改良を重ね、織られるようになったそう。

「日本人って、基本的に改良や工夫をするのが得意みたいですね」

おっと、本題からそれてしまいましたので、戻りましょう。

さて、「武家の女性に大変身プロジェクト(笑)」も無事に遂行した私達は
続いては近代の岐阜を知るために次のコーナーへ。

こちらでは江戸時代から幕末、明治、大正、昭和の時代の
岐阜を垣間見る事ができます。
私なんかは洋館建築好きということもあって、昭和初期の戦前までの
日本の歴史だったり町並みの風景などが好きです。はい。
(なので、まあ明治村が私的には聖地なのですが…笑)

さて、こちらの体験コーナーで「岐阜の香りをかぐ」という
ちょっとかわったものがありました。
それは赤と黒の小さい玉手箱。
ふたをあけると…ほんのり香りがするのです。

「おや、これはいつぞやで嗅いだ香りだ」と思っていたら…思い出しました。

以前にこちらの歴史博物館で開催された「和傘講座」にて
作業中に私の鼻をくぐり抜けていった香りのような…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2008-02-25

はい。答えは「柿渋」でした(笑)

他にも岐阜県本巣市の特産の「薔薇」の香りなど
いろいろなものが香りの玉手箱に閉じ込められていたのですが…
その中に、ちょっと変わったものがありまして…
酸味のある香りがあったので「?」と思っていると
また別のボランティアの方が出現されて
『これは、鮎すしなんです』と説明してくださる。

「鮎すし?!」

初耳でした。なんでも滋賀県にある「ふなずし」のように発酵させて作るすしだそうで
かの徳川家康が食した際にたいそう気に入ったそうで江戸城へ献上を依頼したほど。
浮世絵調の絵にはその「鮎ずし」の制作工程が描かれていて
それを指差しながら、ボランティアの方が親切丁寧に教えてくださいました。
『江戸から献上の依頼が来ると、届ける予定日を知らせて
 それから逆算して、鮎ずしを仕込み、そして届けていたそうです。
 川などの氾濫も今以上にありましたから
 時には献上の予定日時に間に合わないこともあり
 そういう場合には、きちんと理由をつけて説明していたそうですよ』
とのこと。

「へぇ〜っ」

家康さん、献上云々はあれど…
つまり今でいうところの「お取り寄せ」みたいなことしてたんですよね。

「家康さんも、グルメだったんだねぇ」と思わずにんまり。

そして最後に体験したのは…

「浮世絵の重ねずり」

黒・青・茶・赤の4色のインクをそれぞれの浮世絵の版に重ねて…
江戸時代の浮世絵を完成させるというもの。
はい。ユキヲは…

「モノ作り系の体験コーナー大好きなのよねぇ」

実はこれも先月訪れた際にチャレンジしたかったけど、できなかったもの。

「いや、近くにボランティアの方もおらず、刷るための紙も近くになかったのでね(苦笑)」

という訳で、今回はボランティアの方にコツを教えていただきながら
浮世絵を仕上げることになりました。

最初にローラーを手に持ち、スタンプインクの台の上で

「コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ…」

と、しっかりとインクをローラーになじませ…
そして、その色の版の上でローラーを

「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…」

と、インクをのせていきます。

ボランティアの方から紙を1枚いただき、
版の上に乗せて…右手に「バレン」を持ち
(バレン…持つの、何年ぶり?!…爆笑)

「ズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリ…」

と、円を描くようにバレンを動かし、
慎重にインクが紙に浸透するようにこすり続けます。

そして完成したものがこちら。
浮世絵復元.jpg
広重と英泉による「木曽海道六拾九次」のなかの
「岐阻路ノ駅 河渡 長柄川鵜飼船」

さすが岐阜市の歴史博物館。
浮世絵の版も吟味されている(^^)
鵜飼船の素敵な浮世絵ではありませんか!

「おぉ〜っ。すご〜い」
たった4版なのに…この立体感。
いやはや体験コーナーにしては素晴らしい重ね刷り体験。

刷り上がった浮世絵はインクがちゃんと擦れないように
ボランティアの方がわら半紙にはさんでくれました。

「ありがとうございました」

そうそう。
本来、浮世絵は版木に色絵の具をつけてそれを刷毛でのばしていきます。
というのも、その色絵の具の置き方によって濃淡など、
様々な刷色の表現が可能なため。

しかし、これでは一般の方が体験するのには絵の具の加減も難しいですし
不特定多数の人が版に色を乗せると、力のかけ具合も様々なことから
木の版では予想以上の損傷が心配されます。

そこで、こちらの体験コーナーでは
インクを乗せる際に使うのはローラーを使うことで
刷色のムラを最小限におさえることができますし
版も痛みが少ないゴム製となっておりました。

土器のパズルや文様付け体験、そして衣装の着用や、浮世絵の重ね刷り。

「どれも学芸員の方々の工夫が見られる貴重な体験コーナーばかりですね」

Miltmozmmerちゃんとも話していたのですが
「入館料300円でこれだけの体験ができるって…」
なんて、価値ある300円なんだろう。

とても楽しいひとときでした。

さて、外に出た2人。時計を見てびっくり。

「あら!もう3時半過ぎ!」

実は、この後、金華山に登って山頂にある「リス村」に
出掛ける予定をしていたのです。

「あぁ…大丈夫かなぁ…」

これから出掛けて果たしてリスに会うことができるのでしょうか?

続きはまたのちほど…
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コメント 6

tanuki

おお~♪ まさに「お市の方」って感じで素敵です!
やはり、現代の着物の着方とか帯の結び方とは異なったスタイルですよね。
あと、鮒ずし、滋賀在住の私もいまだに食べたことがありません(笑)
あの匂いはかなり強烈ですよね~~(^^;;;
江戸まで鮒ずしを取り寄せていたとは、さすが家康公ですね。
by tanuki (2008-10-24 18:56) 

ユキヲ

>tanukiさんへ
nice&コメントありがとうございます。
いやはや、中学・高校生時代の歴史の資料集などで見かけた
「武家の女性」の姿、まさか自分が体験できるとは…(笑)
貴重な経験になりました(^^)
明日も分からない時代に生きる女性達の中には武道をたしなむ
女性もいたとのことですので…それを考えるとアクティブな女性向けの
着姿だったのかもしれませんね。
鮎ずしの香り…
「岐阜の特産に酢の物なんてあったっけ?」と思っていたら…
まさか鮎をそんな発酵させて作ったものがあったとは
私も全く知りませんでした。家康公のお気に入りだったということも含め本当、良い勉強になりました。
鮒ずしは強烈みたいですね。たまに旅番組などに出てきますけど
皆さん、正直なリアクションをされていますものね(^^;)

by ユキヲ (2008-10-25 22:56) 

whitered

 武家娘よくお似合いですよ。色合いも中間色でなかなかいい色ですし。じゃあ、この日はきっとお洋服なんですね。きものの上に着物じゃあ十二単のようになってしまいますものね。浮世絵の体験も良さそうですね。これで300円は安いです。体験したらお値打ちものですね。
 先日、娘が鮒ずしの「お茶漬け版」を買ってきました。こっちはあまり臭わなくて、素人受けのするお味でした。でも6切れほどで600円ほどしたとか。これはちと高いと思いました。リスさんのほうも読ませてもらいました。間に合ってよかったですね。いくら飼われているといっても、まだ半分は野生が残っているのですね。えさを食べているところが、愛くるしいです。

by whitered (2008-10-26 17:53) 

ユキヲ

>whiteredさんへ
nice&コメントありがとうございます。
はい。この日は金華山の山頂に行く予定でしたので
動きやすいデニム系のパンツとTシャツ姿で出掛けました。
そのため、衿の合間からTシャツがちらちらと出てきて「あらら」でした。
浮世絵の体験はとても楽しかったです。
スタンプとはまた違った…
バレンを使って色をのせるところが非常に面白かったです。
鮒ずしの「お茶漬け版」…
最近は昔からのものを現代風にアレンジして伝統を越えるものが
できあがったりして、非常に興味深いですね。
そうですね。6切れで600円は少々割高ですね。
やはり、それだけ手間ひまかけているからでしょうかねぇ。
リス…
そうですね。ある意味、半分野生が残っているのかもしれませんね。
よくよく考えてみれば、最近生き物をこの目で見るのって
ベランダから眺めた時に目に入る鳩やすずめぐらいかなと。
そうやって考えるとこの日は久しぶりに生き物とふれあうことができ
楽しいひとときでありました。
どんなにリス達が逃げ回ってても…このえさを食べる姿を見せられれば…
こちらも自然と笑顔になっておりました(笑)
by ユキヲ (2008-10-26 23:01) 

菜の花

菜の花です。
とても素敵な300円の贅沢ですね(笑顔)!
私も「武家女性姿」を時間を見つけて体験しようと思います。

両親の故郷、和歌山には「なれずし」という寿司があり、
似たような(?)ものだと思います。
15年以上前(?)、仏像の展覧会が、確かここの博物館で開催、
会期中2回出かけたような記憶があります。
説明がとてもわかりやすく楽しい、男性学芸員さんがいました。
もしかしたらあの方が手がけたのかな・・・とも、ふと考えました。
「たった一度説明を聞いただけの方」ですが、印象に残っています。

ところで、一宮市博物館で、『一宮三八市のにぎわい』という
「真清田神社の市」を取り上げた展示があるようです。
こちらも楽しみにしています。

by 菜の花 (2008-10-27 20:10) 

ユキヲ

>菜の花さんへ
コメントありがとうございます。
博物館を出てから以前、菜の花さんが「300円で…」という
お話をされていたのを、ふと思い出して思わずにんまりしてしまいました。
(^^;)
ぜひ、お時間ございましたらぜひお出掛け下さい。
公園内の散策は緑も多く清々しくなりました。
これからまた寒くなると紅葉がきれいだと思いますよ。

駅から少し距離がある博物館ですが、毎回企画展には趣向がこらしてあり
訪れる度に発見と感心が行き交います。
毎年冬に開催される「ちょっと昔の道具展」などは
「三丁目の夕日」のヒットもあって、毎年
子供には新鮮で、大人には懐かしい人気の企画展みたいです。

そうですか…一宮市博物館では市の展示ですか…面白そうですね。
そうそう、私の母の実家がそこから近いものですから
小学生や中学生の頃に何度か、常設展を見ては
古い農具や工具、そして機織り機などに妙にひかれて
じっくり観ていましたね。
古い道具にそんな頃から興味があったみたいです(苦笑)
by ユキヲ (2008-10-28 22:50) 

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