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「和傘を作る(3)最終回」 [作品制作のはなし]

2月24日(日)
ずいぶん間が空いてしまったのですが…
とうとう、あの和傘講座の最終回。

第1回:つなぎ
1月13日(日)
http://blog.so-net.ne.jp/yukiwochannel/2008-01-15-1

第2回:紙を貼る
1月19日(土)
http://blog.so-net.ne.jp/yukiwochannel/2008-01-19
1月20日(日)
http://blog.so-net.ne.jp/yukiwochannel/2008-01-21

で、2月24日(日)のこの日は、第3回:かがりをする
という訳です。

何度も書いてくどいようですが…
前回の「紙を貼る」から、2週間ほど休ませた後、和傘振興会の方々の手により
「軒切り」、「止め釘打ち」、「糊引き」、「下地塗りすり」、「油引き」
「天日干し」、「漆かけ」、「藤巻き」、「石突き付け」、「カッパ付け」
までの作業をしていただいた訳です。

で、実際、最終回のこの日、実習室に入ってしばらくしたら
和傘振興会の会長さんよりお話があって
『今年は、天候が不順で…傘を乾かすのがなかなか大変で…
 スタッフの人達も苦労しましたけど…今日の日になんとか間に合わせてくれました』
との裏話も飛び出しました。

「確かに…今年は雪も降ったし、気温の差も激しかった」
そんな気候が不順な中、本業の合間を縫って作業を進めてくださったかと思うと
本当に、感謝のひと言に尽きます。

さて、今日は「かがり」という作業。
道具は糸と針のみ。シンプルですね。

「かがり」の役目としては
(1)小骨の補強
(2)装飾
ですね。
それぞれの小骨に穴が4つ空いていますので、そこに針と糸を通していきます。

にしても…今回使う糸が巻かれている玉。

もう、見た瞬間「アノニマス・デザイン」と
ココロの中で叫んでしまいましたよ。
そうねぇ…ユキヲもともとこういう形大好きだものね。
ほら、昔、歯車みたいなのに穴が空いていて
それにペンとか差し込んで、ぐるぐるプレートの中を回すと
こんな模様出来たじゃないですか(笑)
あれに興味が湧いたのと同じ感覚でしたよ。

(注)アノニマス・デザイン
鍋やボールなど、機能的なデザインで定評のある「柳宗理」氏が
商業主義に偏重したデザインのアンティテーゼとして、
「無意識の美」という意味でプロダクトデザインの理想型として
機会があると、お話されているデザインの考え。
誰がデザインしたのか分からない、
あるいはデザイナーの参加さえ許されないものの中に
美的に素晴らしく、長く使い続けられているプロダクトがあるという意。
柳先生は、アノニマスデザインの例として
フラスコをはじめ、そろばん、裁縫用のへら、スクリュー、足袋、
そしてはさみ、ピッケル等々をあげられている。

さて、本題に戻りましょう(^^;)
まずはこの糸を「ひとひろ(両腕を水平に開いた長さ)」程度に切り、
針に通して準備します。
長さをひとひろにするのは、もちろん、長過ぎると糸がからんだりと
作業に支障が出ますからね。
作業の途中で糸が足りなくなったら、新しい糸と「こま結び」で
つなげて作業を再開するだけのことです。

まずは一番手元側にある小骨の穴に糸を通して結びつけて
右から左へ糸を通して、それから時計回りに数えて、23本目の所にかけていきます。
それからは一つずつずらして穴に糸を通すと…

こんな模様ができました。

そして5本目ごとに左から右へ穴に糸を通してぐるりと一周。
さらに一周目に通した穴から3本目の穴に糸を左から右へと通して一周。
すると、小骨の穴は1本おきにまっすぐ糸が通ることに。

続いては表に糸が通らないように骨の後ろへ一度、針をくぐらせて
それから手元から2段目の小骨の穴に左から右へ通していきます。
すると…1段目から2段目に通じる糸は表からは見えなくなります(^^)

今度は2段目の穴を5本目ごとに左から右へ穴に糸を通してぐるりと一周。
さらに一周目に通した穴から3本目の穴に糸を左から右へと通して一周。
すると、小骨の穴は1本おきにまっすぐ糸が通ることに。

そして、また、表に糸が通らないように骨の後ろへ一度、針をくぐらせて
それから手元から2段目の小骨の穴に左から右へ通していったら
3段目の穴を5本目ごとに左から右へ穴に糸を通してぐるりと一周。
さらに一周目に通した穴から3本目の穴に糸を左から右へと通して一周。
すると、小骨の穴は1本おきにまっすぐ糸が通ることに。

そして、今度は3段目と4段目を使って
1本抜かしては上下に山形に糸をかけていき
あの和傘独特のかがり模様が出てきます。
全ての穴に山形の糸が通ったら、最上段の穴に
5本目ごとに左から右へ穴に糸を通してぐるりと一周。
さらに一周目に通した穴から3本目の穴に糸を左から右へと通して一周。
すると、小骨の穴は1本おきにまっすぐ糸が通ることに。

最後のところは始点の小骨の穴に3回ほどくぐらせて玉留めして完了。

無事に完成となりました。

ところが…実はユキヲ、大失敗でして…

例の3段目と4段目の山形の模様を作る所で
1本、針を入れる箇所を間違えてしまったんですよね。
おまけに、拾ってはいけない糸まで拾ってしまった様子。

実は、先生が作業中
『あんまり傘に接近せずに引き気味で作業しなさい』と
何度か受講生の方々に声をかけていたんです。

仕上がってその言葉の意味が身にしみてようやく分かりましたよ。
つまり、手元ばかり見ていると全体が見えないということです。

「なんだか周囲のものが見えないなんて…私らしいわ」と
この大失敗には思わず苦笑い。
すると…
『自分で作ったっていうことに大きな意味もあるんだし…大丈夫、大丈夫。
 良い傘ができましたよ。本当、よくがんばりました』と
スタッフさんから温かいお言葉をいただきました。

そうです、素人の私がここまでできたのも
とにもかくにも和傘振興会の方々のおかげ。感謝、感謝でございます。


骨の漆のツヤが、これまた洋傘にはない奥ゆかしさ。
傘からも独特香りが漂い「日本の香り」という感じです。

他の受講生の皆さんも無事に完成。
そして最後に会長さんから興味深いお話が…

『せっかく皆さんが一生懸命に作った和傘。
 その和傘をさして出かけてみるのは良いのではないかと
 昨年は春に一度、以前の制作した方々に声をかけて
 この近辺を散策するという企画をしてみました。
 今年も機会があれば開催したいと思っておりますので
 まだ、日程は確定しておりませんが、
 その場をもうけた折には、ぜひご参加いただけたら幸いです』

とのこと。
「いいなぁ…」
確かに、作っておしまいじゃ、寂しいですから…
そういう企画というのはありがたいですよね。
きっと作った傘も喜ぶでしょうし(^^)
「もしその機会には着物ですかな」
と、思わず妄想にふけるユキヲでありました(笑)

そして解散前には会長さんから傘の取り扱いについてのお話があり
今年は天候不順で乾燥が不十分であったため
部屋の中で良いので、和傘を中開きにしてしばらく置いて欲しいということと
2〜3ヶ月に1度は傘を開いてくださいとのことです。

あと別のスタッフさんからは
雨の日に使用した際には、和傘は柄の先(石突)を地にして
傘の頭を上にすることを教わりました。
そうです。時代劇で雨のシーンになると必ず出先から帰ってきた
町人は家の壁にそうやって立てかけますよね。
洋傘と違い、和傘はそうすることで
雨の雫が傘の頭にたまって骨や紙が傷むことを防いで
骨と均一に折られた傘の紙の筋に沿って雨の雫が落ちていくのだそう。

そして開く際にもコツが。
柄を持ったら少し左右に振り、少し、軒が開いたところで
柄に沿って、手を入れて、中の手元ロクロをつかんで
傘を開くとのこと。

「ああ、何だか江戸町民の気分だわ」と開いては閉じてを繰り返していた私(笑)

いやはや、地元の伝統工芸を身を持って体験できましたし
その奥深さを知る事ができた、とても充実した講座でした。

そういえば…
来週からお世話になる和裁のH先生が
以前、私が着付のお稽古の後にお茶していた際に
和傘講座での出来事に興味津々だったのでぜひ一度披露しなくては…
また機会を見て、お稽古に出かける際に持っていこうと思っています。


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チームB 専任スタッフ

Yukiwoさま

  4回に亘った講座へのご参加と詳細リポート、お疲れさまでした。

   Yukiwoさまの、沈着・冷静・的確・丁寧・迅速・安心・安全(?)な
  リポートは、重要情報満載で、こっそり、今年度のミッション遂行の
  参考にしておりました。拝読する度に、『な~るほど』『だよね~』と
  素直に頷いてしまうリポート、説得力があって十二分に楽しませて
  いただきました。その上、コメントデビューまでさせていただいて…。
  本当にありがとうございました。

   やっと、お手元に届いたYukiwoさまの和傘、頭轆轤の部分で
  目欠けてしまっていた親骨、仕上げでうまく納まっていたでしょうか?
  どうぞ、必須アイテムの仲間に入れてやって下さいませ。

   最後にひと言、伊藤園の<お~い お茶・濃い味>の首かけ
  ノベルティ、要チェックです!

   
   
 
by チームB 専任スタッフ (2008-02-27 18:04) 

チームB 専任スタッフ

Yukiwoさま

   申し訳ありませ~ん!
  コメントの変なところで区切れてしまって……。
  不慣れなことゆえ、お許し下さい。

   ついでと言っては何ですが、
  『和傘って素敵だぁ!』で検索していただきますと、
  昨年のそぞろ歩きの様子がうかがえます。
  
by チームB 専任スタッフ (2008-02-27 18:24) 

ユキヲ

>チームB専任スタッフさんへ
コメントありがとうございます。
こちらこそ、きめ細やかなサポートと楽しいご指導感謝いたします。
頭轆轤から落ちてしまっていた親骨も
スタッフの方に糸でしっかりと固定していただいたので大丈夫です。
おかげさまでしっかりと役目を果たしてくれて
開閉もスムーズにできております。
丁寧に作業工程を書いたおかげで、ご心配おかけしました。

和傘講座の人気の理由が、今回自ら体験してなんとなく分かりました。
和傘の構造を知ることもできますし…
何より、自分の手を頼りに作業を進めるところが奥深いですね。
とかく、現代ではデジタルなものばかりに囲まれているので…
こういった作業が時に何かを呼び覚ますのかもしれませんね。
だから、講座のリビーターの方がいらっしゃるのではないかと。
あ、昨年のそぞろ歩きの様子、拝見しました。
とても楽しそうですね。皆さん、いい顔されています。
楽しい気持ちがこちらにも伝わってきます。

お〜いお茶:濃い味。
早速、明日の朝にコンビニでチェックしてみますっ!
情報ありがとうございます。
by ユキヲ (2008-02-28 00:05) 

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