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「地獄から生還した2人」 [お仕事のはなし]

今日のお話は私が「地獄だった」と呼んでいる
求人広告制作をしていた頃のお話です。
その頃一緒に働いていた人と久しぶりに会ったことを
一生懸命書いていたらこんなに長くなってしまいました(汗)
お時間ある方はよろしければおつきあいください(滝汗)

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私は長女だからお姉ちゃんという存在がいない。
でも、心の中で姉さんと呼んでいる人がいる。
それは求人広告制作をしていた会社で営業アシスタントとして仕事をしていたAさん。
私より数カ月遅く入社したんだけど年上だし、やっぱり人生経験も私よりあるということ、
そして何より私のつたない話をよく聞いてくれたりした。
だから私の中でその人は「姉さん」

ケースバイケースとはいえ
だいたい会社を辞めるとその会社に勤めている人とはそれっきりになる。
だけど、なぜか姉さんとは今だに交流がある。
携帯のメールとか、手紙とかで細く長く、その交流は続いている。
数年前には一緒にお芝居見に出掛けたり…
食事も頻繁にという訳ではないけど時間があうと、ご一緒してくれる。

で、先日から始まっている企画展示の案内も兼ねて
いつものように姉さんにハガキを送ったら
姉さんから携帯メールで「当分暇だからいつでも誘って」と返事が来た。
そうなのだ。姉さんもとうとうあの会社を辞めたのだ。
そんな訳で昨日は最近オープンした地鶏料理のお店で久しぶりに会うことにした。

私と姉さんがいた会社は求人誌や結婚・住宅情報誌を発行している
会社(と言えば、だいたい想像がつくかと思いますが…)
の代理店として求人広告を制作していた。
私が入社した頃は人数も庶務、営業、制作を全員合わせても
せいぜい20人もいるかいないかだった。
それが若手の営業がチカラを付けて
そして新卒も採用するようになり、私が入社してから2年もしないうちに
人数は倍近くになり、そしてオフィスも広い場所へと引っ越した。

社長は良く言えば放任主義、悪く言えば、いい加減。
自分の好きなことだけしかやらない。
そんな社長が、私が入社して2年を過ぎた頃にひとつの決断をした。
「飲食業に手を出す」
それが社長の夢だったんだとか…
で、社長はフランチャイズで有名な某焼き鳥屋と串揚げ屋を立ち上げることとなり
結局、そっちにかかりっきりになった。

育ってきた営業が売り上げを伸ばし、
制作スタッフも質のいい原稿作り、応募効果を上げるようになった。
営業成績だって、他の代理店より上回っていた。
そんな中フランチャイズで飲食業をすると言っても、
しょせん、今まで求人広告売っていた営業だ。
すぐに利益が出ると考えるのは厳しい。
となると…ひょっとして社長、求人広告としての
売り上げを飲食にまわしはしないか?
と、私は正直、心配になった。

そんな矢先、私は胃を壊して自分の身体をいたわるため会社をあとにした訳で…
でもその時にした心配は、昨日、姉さんの話を聞くからに的中してた。

『ユキヲちゃんが辞めてからね、
 オフィスも別階に借りてね、営業も2つに分かれたの。
 だけど、オフィス借りるのにも、それなりにお金かかるでしょ?
 それがみんなが一生懸命営業して売り上げた利益から出ていると思うと
 正直かわいそうでね…。だって別階に借りたオフィスなんて
 スペースの半分、週に1度使うか使わないかの会議室でね。
 そんなの作るぐらいなら、多少狭くたって、1つのオフィスのフロアで
 十分だし、その借り賃を社員に還元したらいいと思うの。
 だって給料は上がらず安月給、だけど仕事は増える一方じゃ
 妻子持ちの営業さん達がかわいそうだよ。
 そんな中、社長はあいかわらず飲食につきっきりで… 
 私ね、思うんだけど…社長、求人広告で売り上げた利益
 相当、飲食の方に注ぎ込んでいるんじゃないかって』
と、姉さんは地鶏の岩塩焼きをほおばりながら熱く語った。

『世の中、お金だけじゃないと思うの。
 でもね、自分がやったことに対して何かしらの見返りがないのに「一生懸命仕事しろ!」
 と言われてもね…気力もなくなるものよ。私だって営業アシスタントだもの。
 営業さんとお客さんの間で、結構、苦労したわぁ』
と姉さんは最後に出た黒ごまのアイスクリームを口に運びながらそう言った。
「そんな中で5年も働いたんですよね」としみじみ。
『あら、ユキヲちゃんだって、それくらいいたんじゃない?』
「いいえ、私は2年半でした」
『うそ!そんなくらいだったっけ?』
「あそこにいると毎日時間に追われて…1週間が半月ぐらいに感じる時がありました」

そうなのだ。
毎日仕事に追われ、夢の中でも仕事するぐらい。
鬼チーフには何度も原稿のダメ出しされ、赤が入れられた自作の原稿は真っ赤。
原稿を直していると、営業から発注が来て、また新たな原稿を制作することに…
「あと何本原稿作ったら帰ることできるんだろう…」
特に締切日前日は時計の針はぐるぐるまわる。
気がつけば終電間際…急いで片付け電車に飛び乗る。
そして疲労困ぱいでやっと家に帰り、とりあえず歯を磨こうとすれば
歯磨き粉と隣に置いてあるクレンジングジェルとを間違えそうになる。
その逆もまたあった。
そしてお風呂場ではシャンプーを何度も手にして
「あれ、さっきシャンプーしたんだっけ?」
さらに湯舟に浸かれば、うとうと…ブクブクと顔をつけてようやく目を覚ます。
お風呂から上がり、布団に入っても
「今日作った原稿、先方からOK出なかったらどうしよう」
「あの原稿、明日営業から指示が来るっていったけど…無事、仕上がるのかな」
自分も嫌いなマイナス思考がここぞとばかりにふくらみ
神経が高ぶって眠れない。

「20代前半だからできたんです。あの仕事は…
 仕事のスピードと質は明らかに入社前よりは向上したんですけど…
 精神と肉体は確実に低下しましたね」
と私、少し、昔の地獄がフラッシュバックしつつ姉さんに話す。
『そうだね…でも良かったね。お互い脱出できたもんね。そこから』
と、姉さんはにっこり笑った。
「はい」

また一緒にゴハン食べましょうと約束して姉さんと別れたけど…
とにかく終始、姉さんの顔がすがすがしく…そう言えば…
『そうそうパソコン教室に通っているのよ』と
まるで学生のようにイキイキしていた。
その顔を見ることができて私もうれしかった。

でも、何だか、夕食では「地獄からの生還」を
ネタにして盛り上がってしまったなぁ…(苦笑)
とはいえ、なんとなく姉さんとこうして細く長く続いているのは
やっぱり、「地獄を味わった」という何とも言えない感覚を
共有している所、ある意味あるかもしれない…
と、帰りの電車でしみじみ感じてしまった。


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コメント 2

harry

今の私の職場は、まさに同じ意味の地獄とも言えるところがあって。
経営者が自分の夢を追いすぎて社員が次々に脱落中、なのです。
で、退職後にしばらくして遊びに来る連中は、みんな血色が良くなってる(笑
でも、経営者と直接話す機会の多い自分としては、ここで逃げたらイカンな、なんて気持ちもあって、毎日が戦い(笑)。飽きることがありません。
なんて自虐的に楽しんでいるんですけど。
by harry (2005-10-26 01:02) 

ユキヲ

>harryさんへ
何だか戦国時代の再来かと思うくらい、
私が当時勤めていた会社でも脱落者続出でしたが…
「血色が良くなる」という言葉にはズキューン!と来ました。
まんま数年前の私と同じようなので(笑)
やっぱり生身の人間なので肉体的・精神的に限界はあるでしょうし
何より、将来の自分像みたいなものをイメージすればするほど
現実とのギャップが開き、とかく仕事には悩みはつきものですね。

今回記事に書いた会社もそうですが
以前に勤めていた会社でもそういう雰囲気がありました。
私もいろいろな意味では結構粘り強いタイプだとは思うんですけど
以前の会社ではいろいろな仕事を掛け持ちしていたため
今までに経験できなかったこともできて楽しいことは楽しかったのですが…
(制作兼営業アシスタント兼イベントスタッフetc…のような具合)
逆に会社の内部事情が見えてしまい
「このまま居てもやりがいのある仕事はできないし…
 将来、この会社があるかどうか…」と思って、判断して辞めました。

ちなみに経営責任者やトップに立つ人にはAB型が多いんだとか。
前の会社も、そして前の前の会社も社長はAB型でした(苦笑)
O型(私)ってAB型、苦手なんですよね…(^ ^;)
by ユキヲ (2005-10-27 00:34) 

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