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「不思議の国のアリス展〜ルイス・キャロルのお伽の世界〜」 [展覧会のはなし]

7月23日(木)から名古屋タカシマヤで始まった
「不思議の国のアリス展」に
仕事を終えてから行ってきました。

不思議の国のアリスと言えば…
私が3歳頃に、家にあったレコードプレイヤーで
アリスのお話が入ったディズニーのドーナツ盤(笑)を
何度も聴いていたそうです。

『アリスちゃん、アリスちゃん』
「誰?私の名前を呼ぶのは誰?」

というような具合だったと思うのですが…
まあ、それは本当、淡い記憶(苦笑)

それはさておき、私の中でアリスと聞き
鮮明に思い出すのは
アリス1.jpg
「ジョン・テニエルの挿絵」
(今回の告知チラシにもふんだんに使われておりました…笑)

なぜかというと…

90年代前半に、ジョン・テニエルの挿絵をプリントした
文具が販売されていたんですよね。
(覚えている方、いらっしゃいますか?)

その当時、中高生の私。
アルミのペンケースやら定規やら…木製のシャープペンシルから…

「アリスのステーショナリーセットを持ち歩いている状態(笑)」

それぐらい近所の文具店で買い求めては使っておりました。
にしても…

「ハンプティ・ダンプティがアリスに手を差しのべている
 あのイラストが入ったペンケースを持った女子って…」

ある意味、怖い?(苦笑)

なぜそんなにはまってしまったのかは謎なのですが…
元々、小さい頃から細密画調の絵柄が好みだったので。
それはたぶん、当時の小学館の図鑑を見ていた影響かも…。
当時の図鑑は今のように実物写真のものが少なく、
細密画が多かったですから…
そういう絵を小さい頃から見ていた私は
中高生になっても、何か心にひっかかったのでしょうね。

今回のアリス展の展示は、作者であるルイス・キャロルの生い立ちや
アリスの物語の誕生秘話などはもちろん
ジョン・テニエルの挿絵をカラーで映像や壁面にて
紹介されるとのことでしたので非常に楽しみにしておりました。

いやはや、とても興味深い企画展でした。
ルイス・キャロルは大学の数学教師をしながら
物語を書いていたとのこと。
あの時間軸が交錯するような緻密な物語ができたことにも
納得がいきます。

それにしても驚いたのはジョン・テニエルの生い立ち。

イギリスの英国美術院に入学するのですが
しばらくして学校を退学。
(どうも自分の求める絵の技術などの習得ができなかったとのこと)
油彩画に没頭するものの、自分には才がないと見切りをつけることに。
さらには、20歳の時、フェンシングの教官だった父
とフェンシングをしている最中に右目を負傷。失明するのです。

「では、あの細密なイラストを左目だけで描いていたということですか?」

いやはや、その不屈の創作意欲には脱帽です。

そんな彼の描画力と観察力はしだいに周囲に認められて
イソップ物語の挿絵を手がけたことから
週刊風刺漫画雑誌「パンチ」にてその才能を発揮します。
(パンチ:1841年7月にイギリスで創刊された雑誌)

この雑誌内の絵は
木版画家のエビネザー・ランデルズによって
様々な風刺画家の絵が木版にされた訳ですが…
会場にはその一部が展示されていました。
たぶん、ペガサスが空を駆けるシーンだと思うのですが。
(一緒に展示されている本は残念ながらその木版のシーンではなくて残念)

特にジョン・テニエルは、非常に固い鉛筆(6Hだったと記憶)を使い
極細の線で原画を仕上げていたようで…

「これは木版画家泣かせな絵だなぁ」としみじみ。
いや、作者はもちろん、読者にとってはこの上ない表現でしょうけど(笑)

「展示されている木版見ましたけど…細いところなんて髪の毛より細そうでしたよ」

そうそう。泣かせるといえば…
ジョン・テニエルもルイス・キャロルも
製本などの仕上がりにはかなり厳しかったとのこと。

「私なんかは、少なからずも印刷関連の仕事しているから…
 どうも他人事には思えないのよね(苦笑)」

本当、制作のクオリティーに関してハードルが高いクライアントが相手だと…
それに従事する印刷会社は相当キツイですね(笑)
ま、その分、できあがった制作物のクオリティーには
もれなく自信を持てますけどね。

いやはや、ジョン・テニエルの挿絵はすばらしい。
今回、原画などの展示はなかったですが…
大きなスクリーンやパネル展示で
その表現力の豊かさには、あらためて驚かされました。

そして世界各国で翻訳されたアリス本の展示。
面白かったですよ。お国が違うとアリスも違う(笑)

興味深かったのが…
あの「ムーミン」を描いたフィンランドのトーベ・ヤンソンのアリスや…
そうそう、フランスの「エコール・ド・パリ」を代表する画家
マリー・ローランサンが描いた淡いトーンで
消え入りそうなアリスもなかなか味わい深い(笑)
にしても…日本の昔のアリス。
棟方志功ですよ(驚!)「わだばゴッホになる」ですよ!
そういえば…棟方志功は、たしか昔、岡山の友人を訪ねた時に
大原美術館を訪れた際に工芸館で観たかな。たくさんの作品を。

あ、そうそう。こんな立体の展示もありました。
不思議の国のアリス展.jpg
写真撮影OKなので…
夏休みの時期の今、家族連れの皆様は楽しめそうですよ。


さらには原画の展示。
現在、日本で発売されている「不思議の国」のアリスの
挿絵を担当されている銅版画家として有名な山本容子さんの
原画が展示されていました。

「独特の世界観だなぁ」と思いながら
原画の数々を鑑賞して…

次のスペースにたどりつきとても驚いたのが…

「サルバドール・ダリが描いた『不思議の国のアリス』の挿絵」

これは個人的に…本当、すばらしかったです。

「アリスになっても、ダリはダリだなぁ」と。
あのシュールレアリズムにある独特の不思議さが
アリスの不思議な世界とあいまって…

「私は好きです」

最後には日本アニメーションが制作した
「不思議の国のアリス」のアニメーションも紹介されており
非常に幅広く「アリス」を紹介して企画展でありました。

最後にグッズもいろいろと販売されていたのですが…
いろいろ悩んで…
アリス2.jpg
「結局、クリアファイル(笑)」
だって会場限定って書いてあったから(はい、限定モノに弱い人…笑)
ええ、以前にペンケースにデザインされていたものと
同じ「ハンプティ・ダンプティがアリスに手を差しのべている」
タイプのも買ってまいりましたよ(*´σー`)

にしても…帰宅してからも気になったのが…

「ダリが描いたアリスの挿絵」
実は2007年の6月に名古屋市美術館で開催されたダリ展に出かけた私。
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2007-06-10

「確かあの時にも、アリスの挿絵の作品は、なかった気がしたけど…」
そうそう、グラフィック的な広告関連の作品はありましたけどね。
で、念のため帰宅後、図録を確認しましたけど…
やはり、展示されていない作品でした。

ネットでいろいろと検索してみたところ、
現在、ダリの挿絵のアリスの本は販売されていないそう。

「残念」

ダリの作品集とか探したら載っているのかしら?
ルイス・キャロルの貴重な書簡や初版本
さらにはダリなどが手がけた挿絵の原画など展示されていたのに…
今回の企画展用に制作された図録などはなかったので…

「それも残念」

とはいえ…アリスの作品についていろいろと知らないことが
学べた企画展でしたし
さすが時期が時期だけに…
今回の企画展は立体展示あり、原画展示ありと
子供から大人まで楽しめそうな展示でしたね。

「不思議の国のアリス展」は名古屋タカシマヤで8月3日(月)まで開催中です。



-----------------------おまけ-----------------------

実は私、2001年の春と、2003年の春の2度。
イギリスのロンドンを訪れています。
なので、こういうパンフレットが非常に懐かしくて…
会場の出口付近に平積みしてあったので
思わずに手に取って持ち帰ってきました。

イギリスガイド.jpg

今度行くならヴィクトリア&アルバート美術館は行きたいなぁ。
ウィリアム・モリスの作品が多数所蔵されているそうですから。
あとはもう一度、デザインミュージアムも…
イームズのチェアなどはまだ展示とかされているのかしら?
そうそう。テートモダンも外せないですね。
自然史博物館は、生物好きな私にはたまらなかったなぁ。

先日のウィリアム・モリスといい…
しばらくイギリス熱が覚めそうにありません(;´▽`A``
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Miltmozmmer

いやいや、この展示は得るものが多かったですよ〜。
不思議の国のアリスのモデルとなった少女がいたっていうのも、
私は知らなかったし。。。
あと、昭和58年に日本で放送されてた不思議の国のアリス!
イラストを見て、「あ!このアニメ見てた!!」と。
ストーリーは全然覚えてないんですが、あのシマシマのネコに見覚えが。
ユキヲちゃんも見てた?
by Miltmozmmer (2009-07-25 21:22) 

ユキヲ

>Miltmozmmerちゃんへ
コメントありがとうです!
いや本当、私もいろいろと得るものが多かったですよ!
特に挿絵の作家については。
テニエルの生い立ちもそうですが…やっぱりダリが印象的でした。
ダリの挿絵…
あれからいろいろ調べてみたんだけど…
海外で展示されていた時などはダリ独自の解釈の詳細説明などが
添えてあったところもあったようで…
私もそれ読んでみたいと思いましたわ。

日本アニメーション制作の「不思議の国のアリス」
残念ながら私、全く観てなかったみたいで…
全然、記憶にないの。
だって、うさぎの役が野沢雅子さんなら…
観ていたら、印象に残るはずだもの(爆笑)
たぶん、当時はきっと世界名作劇場と…
「魔法の天使クリィミーマミ」に夢中だったかも(苦笑)
にしても…
最初、あの展示観た時に
「あれ?世界名作劇場でこんなのやってたかな?」と
勘違いしてしまって…
(世界名作劇場も日本アニメーションなんだよね…笑)
アリスは全く別の枠で放送されていたのね(;´▽`A``
帰宅後、調べて謎が解けました。

by ユキヲ (2009-07-26 00:11) 

whitered

 こんばんは。『不思議の国のアリス』私もかつて大好きでした。ジョン・テニエルというのですか?独特の絵でしたね。ひね顔の赤ん坊や、怒りんぼの女王様・・・概念くずしに役にたったと思います。ずっと前に『ムーミン展』に行ったときに、トーベ・ヤンソンのアリスの原画があったと思います。大阪のタカシマヤにくるのかなと調べてみたら、『アルプスの少女ハイジ』の特別展が来るそうです。夏休みとあって、サントリー美術館には『スタジオ・ジブリ原画展』が来ているし、青少年向きのイベントが目白押しです。イギリスにはまだ行ったことがないのですが、ヴィクトリア&アルバート美術館覚えておかなくちゃ。
by whitered (2009-07-28 21:43) 

ユキヲ

>whiteredさんへ
nice&コメントありがとうございます。
そうなんです。独特の挿絵はジョン・テニエルでした。
結局、彼の挿絵が印象が大きいですね。
実際、90年代に登場したステーショナリーグッズも
見事にどれもテニエルの挿絵がもとになっておりました(;´▽`A``
そうですか…ムーミン展にアリスの原画が…
やはり、作家さんの雰囲気がどことなく漂って…
世界各国のアリスの絵本は非常に観ていて飽きなかったです。
おぉ、大阪はハイジですか!
となりのトトロでおなじみの
宮崎駿&高畑勲コンビが制作したアニメーションの
金字塔ですね。私は再放送で何度か観ました。
http://www.heidi.ne.jp/
(懐かしのエンディングが再現してあるTopPageがイイです)
当時、アニメーション制作ではめずらしく
風景などのロケーションを海外の現地で行った上で制作された
アルプスの少女ハイジは海外でも評価が高いそうですよ。
名古屋は8月下旬には中原淳一展が開催されるそうで…
これもアートシーンで観て気になっていた展覧会なので
今から楽しみにしています。

イギリス…
新型インフルエンザなどで少々海外へ飛ぶのが億劫な
ご時世ですが…
移動時間が長いところは少々痛いところですが…
その分、得るものはたくさんありましたね。
私は残念ながら、ヴィクトリア&アルバート美術館は
目の前を通過しただけだったのですが
(すでに閉館時間だったのでした…苦笑)
ナショナルギャラリーやテートブリテンやテートモダン…
どこに出かけても、新鮮でそして日本にはないものばかりでした。
大英博物館の天井もガラス張りで…とても美しかったですし…
たぶん、今また出かけるとまた違う視点で観ることが
できるんじゃないかなとも思います。
また、落ち着いたら行けると良いのですが…(笑)
by ユキヲ (2009-07-29 00:24) 

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