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「愛知県美術館:生活と芸術ーアーツ&クラフツ展」 [展覧会のはなし]

毎週、どんなに忙しくても…日曜美術館のアートシーンだけは
欠かさず観ている私。
なぜなら…「大回顧展となると巡回予定が、きちんと告知されるから」
ま、そんな経緯もあって、昨年からずっと楽しみにして待っていたのが…

「生活と芸術ーアーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」

まあ、度々よく話題に出しておりますが
日本を代表するプロダクトデザイナーの「柳宗理」さん
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2009-07-02-1
(横浜で現在「柳宗理展」が開催中でうずうずしている私…笑)
この方のお父様が民芸運動の中核メンバーとなっていた柳宗悦さんな訳で…
で、私も数年前に日本民芸館は訪れています。
まあ、そういう経緯もあって
「ああ、名古屋で民芸の作品をたくさん鑑賞できるのはいいな」
と思ったのももちろんあったのですが…

なにぶん気になったのが…

「ウィリアム・モリス」

実は10年以上前の1997年、
ウィリアム・モリス単独の企画展が
名古屋でも開催されていたのです。
http://www.aac.pref.aichi.jp/aac/aac20/aac20-3morris-3.html
しかし…
「観ることできず」
随分後で気がついたんですよね。残念ながら。
仕方ないよ。1997年といえば…
「社会人1年目」
この年も本当、厄年だったよね。
扁桃炎が原因で、1年に2回も入院するしさ(笑)
美術館に企画展見る余裕なんて全くなかったもの。
「それより自分の身体だろう?」と(苦笑)
ま、それはおいといて…
で、後々、雑誌などの媒体でそのモリスの作品の数々を観て
「しまった!観ておけば良かった」と非常に思ったんですよ。

理由…

「イギリスのグラフィックデザイナー」

モリスをご存知の方ならお分かりですが…
モリスはさまざまな業績を残しているので
(グラフィックをはじめ、家具、ステンドグラス、タイル、テキスタイルもデザインし
 書籍の印刷者、そして詩人としても活躍)
グラフィックデザイナーだけで彼を見るのは
少々偏るとは思いますが…
やはり、私、グラフィック系の勉強してきた人なので(;´▽`A``
気になってしまって…
あとは…その後、自分が2度ほどロンドンを訪れており
普通の人より、少し、イギリスびいきになり…

「余計にモリスが気になり」(苦笑)

何より、私…元々動植物系が大好きなので…

「モリスのデザインに妙に惹かれる」

着物も基本的に植物系の文様が好き。
そんな私ですから…

「モリスの壁紙やタペストリーのデザインに余計に惹かれる」

そんな訳で今回も非常に楽しみにしていた展覧会です。

今日も長くなりそうなので…お時間ございましたらおつきあいください。
まず入り口に入ってから間もなく…「おぉー」ですよ。
「果実あるいは柘榴(ざくろ)」の壁紙。
果実と柘榴.jpg
(図録に掲載されたものをデジカメで撮影しました)
1866年頃、モリスが壁紙用に特別にデザインした最初の模様のひとつだそう。
色のトーンがとても優しくて…それでいてリズム感もあって素敵です。
何より、今観ても新鮮ですよね。

そして何よりも感心するのが…

「緻密でありながら大胆な構図」

そう、模様になる訳ですから、何度も何度も同じ版を刷り込んで
染め上げる訳ですね。
となると…上下左右どちらに基本パターンが展開されても
上手くまとまらなくてはならない訳です。

となると…原画はこうなる訳です。
薔薇と薊.jpg
(図録に掲載されたものをデジカメで撮影しました)

「基本パターンなのに…躍動感あふれる植物達」

そう、決して萎縮してない…のびのびとした薔薇と薊(あざみ)。

「繊細なのに…潔いなぁ…」

これがパターン染めされると…こうなる訳です。
茜染め.jpg
(図録に掲載されたものをデジカメで撮影しました)

薊の葉が…
「唐草文様にも似た、活き活きとした曲線の数々」
いいですよね…ちなみにこも鮮やかな赤は
マダー(茜)の染料だそうです。

さて、私が今回、結構気に入ったのがこちら。その題名がすごい。
いちご泥棒.jpg
「いちご泥棒」(図録に掲載されたものをデジカメで撮影しました)

ちょっと、皆さん、タイトルが「いちご泥棒」ですよ?(笑)
まあ、タイトルには泥棒と付いていますが…
泥棒というのは…ツグミ(鳥)です。


「なんとまぁ…愛らしい姿」
見てくださいよ。上の方にいるツグミ。
「盗んじゃった( ´艸`)」と言わんばかりの
飄々としたこの顔(爆笑)

実は…これ…
当時、モリスが、庭でツグミがイチゴを盗む姿を見て
このデザインを思いついたのだそうです。
だとしたら…

「あー。ツグミのヤツーっ。
 熟れて美味しそうな、いちごばっかり盗んでーっ」

と思いながらこのデザインを考えたんですかね?
それ考えたら、私、思わず…

「ぷっ(◎゚艸゚)」

何だかモリスさんに親近感すら湧いてきます(笑)

あとは…チラシなどの媒体にメインで使用されていたタペストリー。
モリスのタペストリー.jpg
(チラシに掲載されたものをデジカメで撮影しました)

これは圧巻でした。
天地が…「私の身長ほどあります」
そう、なので、この4名の人物が「ほぼ実寸?」と思うほど。
まあ、それもすごいと言えばすごいのですが…
何よりすばらしいのは「遠近の表現力」
木々の茂みにある小さい草花から手前の瑞々しく映る草花を観ていると…
「とても平面のタペストリーには見えないなぁ」
それは木々に実る果実にも言えること。
葡萄の一粒、一粒から、洋梨のような大ぶりの果実まで。
非常に立体的に感じることができる絶妙な色使いです。
そして人物がまとっている衣の織り模様からシワ
さらには細かい装飾品までを…
「縦と横に走る糸で表現するんですからね…」
なんだかそっと手を合わせて拝んでみたくなるような…
そんな荘厳なタペストリーでした。

あとは…文様好きの私にはたまらない作品が…
レナードの物語.jpg
「狐のレナードの物語」(図録に掲載されたものをデジカメで撮影しました)

「これでもかというほどの見開きを埋め尽くす文様∑(゚Д゚)」

ええ、開いた口がふさがりませんでした(笑)

なんでもモリスさん。
この本には縁枠や表題紙にデザインを駆使したので…
こちらは最高傑作との呼び声高い作品なのです。
というのも、デザインだけではなく…印刷にも心遣いがありまして…
部数は紙刷りで300部、上質皮紙刷りが10部だけ
制作されたそう。
小ロットで自分の思い描くクオリティに仕上げたかったんでしょうね。
それに材料となる紙やインクも、国内外から集めて
最高の素材を使うように気を配ったそうですよ。

「すごいなぁ…」

いやはや…いい仕事してますよ。本当。

あと私が気になったのは…
以前(といってももう8年ぐらい前)に
岐阜県の飛騨高山美術館で観たチャールズ・レニー・マッキントッシュ
http://www.htm-museum.co.jp/floor/mack.html
こちらとは、また違った作品を見ることができたのは良かったですね。
マッキントッシュ.jpg
(図録に掲載されたものをデジカメで撮影しました)

「そう、アルフォンス・ミュシャにも似たこの独特のラインがね」
http://www.mucha.jp/
ビジュアルの脇に添えてある書体も独特で…これも結構好きな私(笑)
そう…この独特のテキストフォント無しでは
この全体の雰囲気が出せないなと、いつも思うのですよ。
それぐらい…ミュシャにしても、マッキントッシュにしても…
このテキストフォントが意外に絶妙なスパイスじゃないかと。

あとはドイツのプロダクトデザインですね。
リヒャルトの家具.jpg
(図録に掲載されたものをデジカメで撮影しました)

初めて知った建築家ですが…リヒャルト・リーマーシュミット
彼の作った「音楽室のためのテーブル」
最初目に入った時衝撃的でした。そのフォルムに。
シンプルなんだけど、優雅さすら感じる非常に絶妙なバランス。
そして…
「なんとなく足の部分が音符の上部にも見えなくない私(苦笑)」
とても印象に残りました。

あと後半は民芸の作品がずらりと…

そうそう…今回の展示の目玉とも思われる三国荘の応接間を再現したスペース。
私、以前、東京の国立新美術館で見たかも…
ええ「20世紀美術探検」の時に…
http://yukiwochannel.blog.so-net.ne.jp/2007-02-25-2
この頃は近代建築に熱をあげていた頃だったのと
故 黒川紀章氏にお会いできたことに舞い上がり(笑)
そして肝心のミュージアムショップを観てこなかったというオチ付きだった。
思い出の国立新美術館(;´▽`A``
なので、このブログの記事でもあえて
民芸運動の三国荘には触れていないようですが(苦笑)

やはり、河井寛次郎さんの焼き物は目をひきますね。
以前に「美の壷」でも紹介されていましたが…
http://www.nhk.or.jp/tsubo/arc-20090116.html
その時に紹介されていた
「家の前の道路工事のとき、土管が積んであって
 『L型土管』を見て『美しい』、と叫んだ。」
という河井寛次郎さんのエピソードを思い出し
少々土管にも似た作品を見つけて思わず笑ってしまった私です。

「いやぁ…お腹いっぱいの企画展でしたね」
非常に見応えのあるすばらしい展覧会でした。

アーツクラフツ図録.jpg
もちろん図録もお買い上げ。
まあ別にいいんですけど…個人的に…
「なぜ、表紙に掲載されるのが、C.F.A.ヴォイジーの置き時計?」
いや…いいんですけど…
あれですかね?色的に映えるからでしょうか?
にしても…
「取ってつけた感が…(苦笑)」
まあ、アーツ&クラフツなんで…
確かに他の作品を入れても全然かまわないのですか…
「やっぱり置き時計の作品の画像が浮いている気が…(くどい?…笑)」
他の作品もいろいろあるからねぇ…それも入れてあげても
良かったんではないかなと思いますよ。はい。
まあ、中身がちゃんとアーツ&クラフツとは?とか民芸とは?
という解説が詳しく掲載されていたんで…良いのではないかと。

あとは私、「いちご泥棒」がいたく気に入ったので(笑)
小さいクリアファイルと大きいのを買ってきました。
モリスのグッズ.jpg
あとは普段に使えそうなミニタオル。
片面がガーゼ生地になっているのでこれからの時期、
重宝しそうです。


名古屋の愛知県美術館では、8月16日(日)まで開催中です。
ウィリアム・モリスの作品がお好きな方はもちろん
プロダクトデザインなどに
ご興味のある方は足を運ばれてはいかがでしょうか?

今日も長文におつきあいくださりありがとうございます。
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Miltmozmmer

知人から勧められて、私も気になっていたの!
ユキヲちゃんのレポートを読んで、ますます行きたくなりました!
高島屋友の会会員価格で、チケットが少しお安く買えるので、
買いにいかなくっちゃー!!
by Miltmozmmer (2009-07-12 21:59) 

whitered

詳しい記事に、どれほど力を入れて観てこられたかが解かります。あの「果物あるいは柘榴」の壁紙ですが、もう20年ほども前になるかな。朝日新聞で、図柄が紹介してあったのです。それで、心惹かれてその図案を切り取って、布に写し、フランス刺繍を始めたのです。それは、いまだ完成にいたっておりませんが。優れたデザインは、いつの世にも時間が経っても、新鮮なのですよね。あと、着物の柄にもふれてありましたが、連続模様の印刷といえば、更紗模様ですね。花唐草などひょっとしたら、ジャワやインド更紗の影響はなかったのかしらと思いを馳せるわけですが、それにしても一目見てモリスだと解かるくらい、独得なデザインに昇華させていますね。「いちご泥棒」もお洒落なデザインです。
by whitered (2009-07-13 07:55) 

ユキヲ

>Miltmozmmerちゃんへ
コメントありがとうです。
そっかぁ…お友達におすすめされてましたか?(*´σー`)
いやねぇ…久しぶりに見応えのある展覧会でしたよ。
やっぱりモリスはすごいわ。1人何役?と思うほど…
その多彩な才能には脱帽でした。
だからなのかな…様々な人にそのデザインを愛されるのは…
素材も媒体もそれぞれ違うし…その分、ターゲット広いかもね。
もちろん、モリスの作品の数々も素敵でしたけど…
ヨーロッパ各国のプロダクトデザインも非常に良かったです。
本当、おすすめですよ( ´艸`)
by ユキヲ (2009-07-13 21:21) 

ユキヲ

>whiteredさんへ
nice&コメントありがとうございます。
「果物あるいは柘榴」
そうですか…新聞に掲載されていたんですね。
本当…クオリティーの高いデザインは何年経っても新鮮で素敵です。
私もモリスは壁紙のパターンデザインや製本などの装丁などの
デザインのイメージが非常に強かったので、今回のタペストリーや
ガラス製品などなど…多岐にわたるそのデザインの仕事ぶりには
とても驚きました。
そうですね…更紗模様…確かに連続模様ですね。
イギリスと言えば紅茶、紅茶といえば…インドですから
あながちインド更紗の影響も捨てきれないかも…(笑)
でも、何かに影響されても、それがきちんと「モリス」という
アートフィルターを通して、独自の世界を展開しているのには
本当にすばらしいクリエーターとしか言いようがありませんね。
いちご泥棒…
こんな愛らしい泥棒を素敵なデザインの一部にしてしまうなんて…
本当、ユーモアがあるというか…身近なものから展開させる
その柔軟な発想にも頭がさがります(笑)
いやはや、すっかりファンになってしまいました( ´艸`)
by ユキヲ (2009-07-13 21:30) 

美静

すばらしい感想ですね。
いろいろブログ読みましたが一番です。
私も3回観にいきました。
by 美静 (2009-07-16 00:10) 

ユキヲ

>美静さんへ
コメントありがとうございます。
いえいえ…まとまりのない長文で本当、おはずかしいですが…
最後まで読んでいただき感謝、感謝です。

そうですね…今回の展覧会は何度見てもそれぞれ発見がありそうで…
私ももう1度出かけても良いかもと思いました。
ただ、物理的に時間がない関係で…無理かなぁとも(苦笑)
でも、なんとか見に行くことができて本当に良かったです。


by ユキヲ (2009-07-16 13:05) 

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